日本版災害チャータ

日本版災害チャータとは

背景

南海トラフ地震や首都直下地震、激甚化が進む風水害等の国難災害では,広域な被害状況の全貌把握に時間を要することが懸念されます。また、夜間等発災直後の情報空白の時間帯における被災状況把握も課題であり、衛星活用による被害状況の把握の迅速化が期待されています。近年、国内外の企業が地球観測衛星のコンステレーション整備を進めており、防災分野での衛星画像の活用研究は進んでいます。しかし、現状では実災害時に衛星を実活用するための社会的な仕組みが構築されていません。そこで、防災科研は国内外の様々な組織と連携して、「日本版災害チャータ」構想を立ち上げました。本ページは防災科研の視点でこれまでの経緯、チャータの機能・仕組み、チャータ発動実績を紹介します。

これまでの経緯

衛星ワンストップシステムの開発(2018年度~2022年度)

2018~2022年度にかけて、内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期において、発災直後の災害対応に衛星を活用するための研究開発として実証システム「衛星ワンストップシステム」を開発しました(リンク)。このシステムは、JAXA衛星を含む多様な衛星に対し観測エリアや最適な衛星観測を推奨して観測要請を行い、衛星データや被害域を抽出した情報をワンストップで共有します。(現在も防災科研では運営費交付金による研究開発を継続中)

社会実装体制の構築に向けた実証(2023年度~)

チャータの創設と実証(2023~2024年度)

研究成果の社会実装のため、内閣府 研究開発とSociety 5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE)の「衛星観測リソースを結集する『日本版災害チャータ』の構築と実証」において、社会的な仕組みの構築に向けた実証事業を実施しました(リンク)。防災科研により研究公募を行い(リンク)、選定された民間企業と共同で、実災害や訓練に基づく実証を行いました。その結果、民間主体の社会実装体制を構築する道筋を付けることができました。

府省庁等と連携した実証(2025年度~)

上記のSIPやBRIDGEにおいて、府省庁と連携した実証は、災害時において継続的に実施してきましたが、2025年度は内閣府(防災担当)の事前防災対策総合推進費(リンク)に位置付けられた「官民衛星の統合による防災利用実証事業」として実証を実施しています(リンク)。

衛星地球観測コンソーシアムとの連携(2024年度~)

JAXAが事務局の衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)が主催する訓練「防災ドリル」に協力しています。災害対応における官民連携での衛星の役割や適切な観測に向けての“あり方”を明らかにするため、官民の様々な組織と連携し、実災害を模した環境に基づく訓練を実施し、衛星ワンストップシステム及び日本版災害チャータが協力しました(2024年度の実施成果 → リンク)。

日本版災害チャータのこれから

BRIDGEに共同で取り組んだ民間企業(事務局を構成する組織、解析事業者)との共同研究を継続しています(事務局に関する共同研究 → リンク)。衛星関連企業、衛星データ解析機関、府省庁等との連携・協働に基づき、協調領域/競争領域の構築、災害時の官民連携・協働に基づく運用体制の確立に向けて、引き続き取り組んで参ります。

日本版災害チャータの機能・仕組み

2つの機能

チャータの機能は、①大規模災害時に複数の衛星コンステレーションと連携して被災域全体の迅速な観測を指揮する「司令塔」、②データ解析技術を競争領域として個別ニーズに応じた解析事業者による情報プロダクツの提供を支援する「仕入役」の2つです。チャータによって、機能①により広域に渡る被害状況の全貌把握に資する情報プロダクツ(例:衛星画像データ、共通解析情報)を発災直後から迅速に提供することに貢献できると共に、機能②により個別の災害対応機関や解析事業者の衛星データ等入手の迅速化及び効率化に貢献します。

仕組み

チャータには事務局があります。防災ユーザ・解析機関・JAXAを含む衛星データプロバイダ等との災害時の衛星緊急観測対応の枠組みを構築し、日本版災害チャータの発動基準、提供サービス定義、手順書を含む運用ルール及び基準を策定しています。事務局は、防災科研をはじめ、BRIDGEで実証を行った三菱電機、衛星データサービス企画、富士通の4社で構成されています(2026年2月現在)。

チャータ発動状況(随時更新)

発動回数:計15回 発動日数:計68

発動実績一覧(実証開始以降)

No西暦期間災害名称災害類型
12024年7月25~30日令和6年7月25日からの大雨風水害
22024年8月8~9日日向灘を震源とする地震地震
32024年8月11~12日台風第5号風水害
42024年8月16~18日台風第7号風水害
52024年8月28~31日台風第10号風水害
62024年9月20~26日令和6年9月20日からの大雨風水害
72024年11月1~8日令和6年11月1日からの大雨風水害
82025年2月28日~3月5日岩手県大船渡市の火災火災
92025年7月3~8日トカラ列島の地震地震
102025年7月10~11日新燃岳の火山活動火山
112025年7月30日カムチャツカ半島の地震津浪
122025年8月11~14日令和7年8月6日からの大雨風水害
132025年10月8~14日台風第22号風水害
142025年11月18~21日大分県佐賀関の火災火災
152025年12月8~12日青森県東方沖を震源とする地震地震、津波
 

公表ドキュメント

日本版災害チャータを知るための外部リソース

防災科研が所有する知的財産権

商標

特許

ソフトウェア

  • 衛星データ解析システム:衛星データプロバイダや解析機関等とのデータ共有等の迅速化を目的にクラウド上に構築可能な情報システム。GISエンジンはESRI社のArcGISを使用。

関連プロジェクト

  • 内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期 課題「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」テーマ2「衛星データ等即時共有システムと被災状況解析・予測技術の開発」、研究責任者:六川修一、社会実装責任者:田口仁・酒井直樹、実施機関:2018~2022年度(終了)
  • 内閣府 研究開発とSociety5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE)「衛星観測リソースを結集する『日本版災害チャータ』の構築と実証」、PD:山口靖、研究代表:防災科研 田口 仁、実施機関:2023~2024年度(終了)
  • 内閣府防災担当 令和7年度 事前防災対策総合推進費「官民衛星の統合による防災利用実証事業」、研究代表:防災科研 田口 仁、実施期間:2025年度
  • 内閣府宇宙開発戦略推進事務局 宇宙開発利用加速化戦略プログラム「小型SAR衛星コンステレーションの利用拡大に向けた実証
  • 経済産業省 宇宙開発利用加速化戦略プログラム「多種衛星のオンデマンドタスキング及びデータ生産・配信技術の研究開発」、研究代表:Tellus(防災科研は分担機関)、実施機関:2023年度~
  • 内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期 課題「スマート防災ネットワークの構築」サブ課題A「災害情報の広域かつ瞬時把握・共有」、研究開発責任者:田口 仁、社会実装責任者:取出新吾、実施機関:2023~2027年度