防災情報の統合解析・高度活用技術に関する研究

【2009/11/29】日本リスク研究学会大会の企画セッション「災害リスクガバナンス」

防災科研は、2009年11月29日に、早稲田大学で、日本リスク研究学会大会の企画セッション「災害リスクガバナンス」を開催し、リスクガバナンス高度化のための災害リスク情報や地域防災力向上に向けたリスクコミュニケーション手法のあり方について討論しました。

日本リスク研究学会大会の企画セッション「災害リスクガバナンス」

日本リスク研究学会大会の企画セッション「災害リスクガバナンス」は、無事終了いたしました。

1. はじめに

日本リスク研究学会大会において、当研究所の災害リスク情報プラットフォーム研究プロジェクトの研究成果を発表するセッション(参加無料)を開催しました。論文およびプレゼンテーション資料を公開します。

2. 概要

本セッションでは、災害リスクガバナンスのための方法論や手法開発のみならず、地域における実証実験の事例や、実証実験を通じて得られた知見について、研究発表を行いました。自然災害を巡るリスクガバナンスの高度化のための災害リスク情報や地域防災力向上に向けたリスクコミュニケーション手法のあり方について討論しました。

3. 日時

日時 : 2009年11月29日(日)13:30~15:30
場所 : 早稲田大学西早稲田キャンパス 56号館101号室
共催 : 日本リスク研究学会・(独)防災科学技術研究所

4. 発表資料

セッションチェア : 池田三郎(筑波大学名誉教授、防災科学技術研究所客員研究員)
プレゼンテーション資料

(1) 自主防災活動を通じたリスクガバナンスの高度化に関する研究
  -愛知県における実証実験の取り組み-

須永洋平・岡田真也・臼田裕一郎・長坂俊成・田口仁・坪川博彰・佐藤隆雄

概要:大規模災害への備えや発生後の対応力を高めるためには、地域の自主防災組織や避難所運営組織に加え、防災を目的としないさまざまな市民活動団体、福祉関係団体、地元事業者などの協力・連携、すなわち地域のリスクガバナンスの構築が不可欠になる。筆者らは、①防災マップづくり、②防災ドラマづくり、③避難所運営訓練、この3つのアプローチを通じてリスクガバナンスを高度化する実証実験を、本年度から愛知県内6市町村で実践している。本報告では、この実証実験のコンセプト、リスクガバナンス高度化を支援する分散相互運用環境を用いたシステム、愛知県の実践事例を紹介し、今後の展開について発表する。
発表論文(日本リスク研究学会第22回年次大会講演論文集, pp.243-246.)
プレゼンテーション資料

(2)リスクコミュニケーションのための住民参加による
  地域コミュニティの被害想定手法と防災力評価手法の検討

田口仁・臼田裕一郎・長坂俊成・坪川博彰・佐藤隆雄・安倍祥

概要:地域コミュニティが現実的かつ有効な防災対策を実行するには、参加型のリスクコミュニケーションを通じた自然災害のリスク評価を行うことが重要である。そのために、まず、地域内で起こりうる自然災害のリスクの想定を行うことと、地域の防災力の評価を行うことが重要である。そこで、地域単位で、自然災害による被害の想定を行う地域被害想定手法と、地域内の各主体の繋がりを明らかにする地域防災力評価手法の2つの手法を提案する。本報告では、これらの手法のコンセプトと、評価結果の一例を紹介する。また、これらの手法の実践を支援するシステムの開発を行っており、その概要についても紹介する。
発表論文(日本リスク研究学会第22回年次大会講演論文集, pp.247-252.)プレゼンテーション資料

(3)災害リスク情報の相互運用環境を活用した参加型防災マップづくりの実践と課題
 -地域防災活動とリスクガバナンスの高度化を目指して-

臼田裕一郎・田口仁・岡田真也・長坂俊成・須永洋平・坪川博彰・佐藤隆雄

概要:地域住民による参加型の防災マップづくりは、危険箇所や防災資源の存在を認知する上で有効とされ、すでに多くの地域で実践されてきている。地域防災においては、その対策や災害対応をある一主体に単純依存するのではなく、地域に関与する各主体が協働で取り組んでいくリスクガバナンスが重要である。筆者らは参加型での防災マップづくりの現状と課題を整理した上で、地域の複数主体の参加と災害リスク情報の相互運用の必要性を提案してきた。これらを踏まえ、分散相互運用環境を基盤とした参加型Webマッピングシステム「eコミマップ」を開発し、これを用いた防災マップづくりを複数地域で実践している。本報告では、開発したシステムおよびその実践事例を紹介する。
発表論文(日本リスク研究学会第22回年次大会講演論文集, pp.253-258.)プレゼンテーション資料

(4)防災ラジオドラマ作りを通じたリスクガバナンス創発の試み

坪川博彰・長坂俊成・田口仁・須永洋平・臼田裕一郎

概要:防災科学技術研究所の災害リスク情報プラットフォーム研究プロジェクトでは、災害リスクシナリオワークショップの実施を通じて多様な主体が係り合いながら具体的な地域の防災課題を議論し解決する手法を設計し試行してきた。本研究はその手法をさらに発展させ、住民、NPO、行政、地元企業、各種団体など多様な主体がかかわる地域の災害リスクガバナンスを創発させる効果のある防災ラジオドラマの作成手法を提案するものである。現在、地震および水害リスクシナリオに基づくラジオドラマの制作を神奈川県藤沢市や新潟県長岡市山古志地区などで進めており、今後全国各地の地域主体による防災への取り組みに展開してゆく予定である。
発表論文(日本リスク研究学会第22回年次大会講演論文集, pp.259-262.)プレゼンテーション資料

(5)学校と地域が連携した防災訓練を通じた地域ガバナンスの再編・強化
 -新潟県柏崎市北条地区の事例-

三浦伸也・長坂俊成・坪川博彰・臼田裕一郎・須永洋平・田口仁

概要:新潟県柏崎市北条地区では、中越地震、中越沖地震を経験して、包括的な地区自治組織としてのコミュニティが有効に機能するようになっている。災害時においては、町内会を基盤とする自主防災組織と、町内会を束ねるコミュニティを単位とする住民主体の地区災害対策本部が連携して、地域の災害対応にあたっている。しかしながら、これまで学校と地域が連携して災害対応したことはなかった。今回、平日の昼間、学校の授業中に被災した場合の児童の安全確保と帰宅支援訓練を実施し、地域の災害に対する備えについて点検した。この発表では、北条地区の学校と地域が連携した防災訓練を実施するなかで再編・強化された地域ガバナンスについて発表する。
発表論文(日本リスク研究学会第22回年次大会講演論文集, pp.263-266.)プレゼンテーション資料

(6)防災訓練計画策定過程におけるリスクコミュニケーションの有効性
 -長岡市山古志地区におけるリスクガバナンスの事例-

長坂俊成・坪川博彰・須永洋平・臼田裕一郎・田口仁・岡田真也・佐藤隆雄・池田三郎

概要:長岡市山古志地区では中越地震以降、コミュニティの自主防災のあり方が模索されている。大規模地震災害を想定した市主催の防災訓練計画の策定過程において、リスクガバナンスの高度化を目的としたリスクコミュニケーション手法を提案し実証実験を通じて有効性を評価した。住民、行政、学校、専門家、NPO等のステークホルダーが協働し、ハザードの同定、工学的・社会的脆弱性の評価に基づく集落単位の被害想定、災害対応シナリオ作成、現状の防災体制や資源の評価、地図等を用いた状況の付与、訓練用の対応シナリオと進行タイムラインの作成、情報伝達の手順と書式の策定、ドラマづくり等に取り組むリスクコミュニケーション事例を紹介する。
発表論文(日本リスク研究学会第22回年次大会講演論文集, pp.267-272.)プレゼンテーション資料

(氏名の下線は発表者)