多くの防災研究者が日本全国のさまざまな地域に入り込んでいろいろな防災支援を行っていますが、解決の具体化のためになすべきことを決めるのは地域の方々ですので、実効性があるものにできるかどうかは、結局のところその方々の決意次第ということになるでしょう。研究者はあくまでナビのような存在にしかすぎません。正しい進路に向けての指針にはなるかもしれませんが、運転されるのはあくまで地域の方々です。問題が難しくなっているのは地区防災計画の実行にあたって現実に行動を伴うかどうかには、義務も補償も伴っていないということです。例えば企業であれば企業目標を明確に設定し、それを期間ごとに達成できたかどうかはきちんと検証されなければなりませんが、地区防災活動はあくまでボランタリーなものですので、そこに義務が課せられるようなことになると、途端に息苦しくなってしまいます。
そのような特性があるにせよ、地区で実効性のある「計画」にするためには3つのポイントを明確にする必要がありそうです。3つのポイントとは、
時期の明確化(いつまでに実施するか)
量の明確化(どれだけのことを実施するか:量的計測が可能な指標で表現する)
主体の明確化(誰がそれを実施するのか)
時期については地域によって事情が異なるかもしれませんが、世代の継続性などを考えると中期目標を5年、長期目標を10年程度に設定したらどうでしょうか。5年後、あるいは10年後の地域を具体的にどうするのか、明示するところから地区防災は始めたらよいのではないかと思います。これくらいの期間であれば地域の様々な将来像も、現実的に予測可能な範囲になると思われます。
防災力が高まり地域が自律して改善されていくのは車の運転に似ています。車それ自体を地域に例えると、市民の方々がドライバーであり、エンジンもまた市民の方々からなる働き手です。ガソリンはもしかすると資金的な要素もあるかもしれませんが、協働意識のようなものも重要な燃料の一つなのかもしれません。地域によってはしっかりした地域リーダー(ドライバー)がいるけれども、エンジンが弱く(働き手が少なく)、ただ乗りをしようとする人ばかりとなっているところもあるかもしれません。こうなると思ったほどには進まない効率の悪い車になってしまうかもしれません。車のエンジンが快調に回るためには、普段からの手入れと潤滑油の補給が欠かせません。先に研究者はナビのような存在と書きましたが、ナビとしては運転手の方ができるだけスムーズな運転ができるように、見やすく、わかりやすく、使いやすいものでありたいと常に思っているものの、まだまだ改善の余地がありそうです。皆様からの率直なご意見をお寄せいただければ幸甚です。