日本では住宅は高い買い物の代表です。しかも建物がきちんと作られているかどうかを購入者が完全に判断するのは難しいのが実態です。購入者はある一定の了解をもって、建設者や設計者、そして施工者を「信じて」購入するしか方法がありません。したがって建物については使っているうちに自然劣化するものとは明らかに異なる変化が現れた時には、使用を留保して検査し、場合によっては補修や改善をする制度が必要です。このようなトラブルを避けるため住宅性能保証制度や、住宅瑕疵担保責任保険制度が設けられています。これから住宅を購入されようとしている方がいたら、ぜひこれらの制度について確認されることをお勧めします。
モノを作る側と、作られたモノを購入して使う側とでは、そのモノに対するリスク情報の理解に差があります。この情報の不平等の存在がこの事件の根幹にあり、ある意味でそれを利用した詐欺行為であるともいえます。もし建屋が傾くなどの明確な異常が現れなければ、この事件も発覚しなかったのではないか(知らないまま住み続けていたかも)と考えると本当に厄介です。大規模な地震が起きたとき、あちこちで建物が傾いてしまい、その原因がすべて地震によるものだと言われてしまうと、きわめて問題です。そのようなことがないよう、すべての建物で設計通りに作られているのか、確認する技術の開発こそが今一番必要とされているのではないでしょうか。