去る7月23日(日)世田谷区役所の若林地区センターで、マンション居住者の代表の方々と防災問題に関する意見交換会が行われました。私たちのプロジェクトチームでは昨年度から世田谷区が実施する防災塾への支援を行っており、できれば地区防災計画策定への布石となるような活動に展開できればよいのではないかと考えています。 最初に区の担当者から都が実施した地震被害想定で若林地区がどのような評価となっているかなどが簡単に紹介され、合わせて先般実施したマンション居住者アンケートの結果なども紹介されました。
戸建てと違ってマンションなどの共同住宅は、本来一つの建屋を構成する柱や壁を共有化することで、構造的にも頑丈でかつ経済的な住まいを目指すものであるべきものです。以前大きな社会問題になった耐震偽装などの事態がなければ、きちんと設計され施工された建物は強い地震動にもそれなりに耐え、致命的な被害は出にくいものです。実際震度7で大きな話題となったあの阪神淡路大震災でさえ、全体から見れば非木造のマンションの被害率は木造一戸建てと比べると圧倒的に低いです。 しかし、今回の意見交換会では圧倒的に不安な声が多かったように思います。それはマンション居住者が住民とはいえ戸建ての住民よりもずっと地域関係のつながりが希薄で、ふだんの交流がほとんどないところから、いざ災害となった時に周囲からの支援も受けられないのではないかという漠然とした不安に直面しているせいだと思われます。
私たちは以前から災害時のシナリオを地域で作ることを薦めていますが、このような活動に共同住宅の方々が参加されることはたいへん稀なことです。 マンションは現代生活になくてはならないものですし、20年、30年と住んでいると、戸建て住宅よりもずっと経済的で、合理的でな住まいであることがわかってきます。通勤時間や住環境も考慮に入れると、共同住宅を抜きにした住まい方は都市部では考えられないでしょう。 マンションんを地域にとって有益な「防災資源」とできるか、それとも地域にとって厄介な「お荷物」にしてしまうかは、地域次第ですし、なによりマンションの所有者次第でもあります。長期修繕計画だけではなく、地域と連携した防災計画の整備もマンション価値の一つとして評価されるような、そういう仕組みも模索する必要がありそうですね。
つぼつぼのprofile
国立研究開発法人 防災科学技術研究所
防災情報研究部門
所在地
茨城県つくば市天王台3-1