6月20日(土)午後に日本学術会議で行われた学術フォーラム『われわれはどこに住めばよいのか?~地図を作り、読み、災害から身を守る~』に参加してきました。定員300人となっていましたが、いりはまずまずで、このジャンルの関心の高さが伺われました。
フォーラムは自然災害を研究対象としている各分野の専門家がそれぞれの領域での研究の現状と技術の展望を中心に話されましたが、主催が学術会議だけに研究レベルの話ばかりで、実務的な視点がなく、タイトルにある「どこに住めばよいのか」にはちょっと応えていないなぁという感じが否めませんでした。結局は「どこに住めばよいのでしょう?」と訊きたくなるほどのところです。
現在私たちのチームは地域防災の支援をミッションの一つに据えていて、私もそのお手伝いをしていますが、ここ数年特に感じているのは急速にリスクやハザードに関する情報が各自治体のホームページなどを中心にあふれかえっているということです。いわば災害リスクに関する「情報過多」の状況にあります。一般市民が地域の災害リスクを知りたい、理解したいと思うとき、おおよそ3つの情報が必要とされると思います。一つ目は、その地域に過去に起きた災害はどのようなものであったのかということ。過去の出来事がその場所の性格を雄弁に物語るのはなんでも同じで、まずは事実を正しく知りたいということです。日本は歴史も古くから文書として残されている国でもあるので、おおよそ数百年の単位で歴史的な事実はほぼ解明されています。2つ目はこれからどのような災害が起きる可能性があるのかという情報です。歴史記録が数百年あるといっても、自然災害の繰り返し間隔から見ればそれは極めて短いので、より長期的に見てどのような災害が起きる恐れがあるのかという、災害のポテンシャルを知りたいと思うのは当然です。これも最近はだいぶ解明されてきて、災害の種類ごとに「想定」の作法のようなものが整いつつあります。3つ目はその災害が及ぶ範囲と及ばない範囲の境界はどこにあるのか、空間的にはどこから災害が深刻になるのかという拡がりの問題です。今回のフォーラムはまさにその部分に関する情報の現状が報告されたはずなのですが、専門家と一般市民とのニーズの間には、かなりの開きがあるように思いました。東日本大震災を契機にたくさんのハザード情報、リスク関連情報が提供されるようになりましたが、それを使うのは市民であって専門家ではありません。情報の精度を上げるのにたくさんの努力と資金が必要なのはわかりますが、それだけではなく「使える情報」「実際に活かせる情報」であるための工夫もしないといけないでしょう。今回のフォーラムにたとえば不動産業界の人や、建設土木関係の実務者が加わっていたら、もっと違ったものになったかもしれません。