先月川崎市で発生した簡易宿泊所火災は、26日に亡くなられた方が加わり死者が10名という痛ましい事態になりました。消防庁の資料によれば火元建物と類焼建物はともに木造2階建てとなっていますが、実態は3階部分が増築され吹き抜けになった構造で、一人分の居住スペースが3畳程度の極めて狭い構造だったようです、先日川崎市の小学校での防災の取り組みを支援するために市街地調査をした際に、この火災現場を見てきました。すでに片付け中で火災直後のような生々しさはありませんが、残された骨組みからも元の構造が見て取れます。報道写真から延焼中の様子を見ると瞬く間に建物全体に火が回っていて、もう完全に全焼状態に至ったようですが、このような火災が起きてもなお周りを取り囲んだ鉄筋コンクリート建物には大きな被害は見られません。あたかもコンクリートの竈の中で木造共同住宅が燃えたような印象です。大震災によって同時多発で火災が起きた場合、今回の火災のように覚知から2時間程度で鎮圧、完全鎮火まで17時間を要するような事態は、さらにひどくなることが懸念されます。消火が追い付かず、燃え尽きるまで何もできない火災現場も多かった阪神淡路大震災のケースを思うと、同じようなことはどこにでも起きるのだという感を強くするばかりです。
つぼつぼのprofile
国立研究開発法人 防災科学技術研究所
防災情報研究部門
所在地
茨城県つくば市天王台3-1