2015年2月の大涌谷
箱根火山の活動が活発化したために、気象庁は火山噴火警戒レベルを1から2に引き上げました。ゴールデン・ウイークでなくても多くの観光客でにぎわっている箱根ですから、この対応は観光産業の方々にとっては一種の打撃であることは間違いないでしょう。私たちが注意すべきなのは「箱根」地域のすべてが規制されているわけではなく、まだごく一部であり、箱根観光全体にまで悪影響を及ぼさないようにすべきだということです。今後の推移は注意深く見守る必要がありますが、規制範囲以外の地区まで人が遠のいてしまわないよう、風評被害などに発展しないように気を配ることも忘れてはなりません。
火山というと昨年の御嶽山の例のように、噴火や水蒸気爆発ばかりが注目されますが、そのほかにもいろいろなタイプのものがあります。箱根火山でも1953年(昭和28年)には火山性地滑りが発生して観光客ら28名が死傷するという事件がありました。火山から供給される水蒸気などにより、岩石が変質し崩れやすくなって、大雨や地震などを引き金にして地すべりを引き起こさせることもよくある現象です。また火山性ガス(亜硫酸ガスなど)は呼吸器に障害を及ぼす恐れがありますので、必要以上に吸い込んだり噴気の近くによらないなど、配慮が必要です。特に高齢者や幼児など、呼吸器に障害を生じやすい人たちは気を付ける必要があります。これまでも多くの火山でガスによる犠牲者が出ているのです。
箱根に限らず、日本には多くの火山があり、それらのほとんどが地質学的な観光資源(ジオサイト)として地域経済上重要なものとなっています。ジオツーリズムやジオパークという言葉も、近年多く使われるようになりました。美しい自然景観は私たちに感動や驚きを与えてくれますが、同時にリスクも伴うものであることを、私たちは御嶽の経験も踏まえて今一度認識する必要があります。