まもなく4月25日がやってきます。この日はあのJR西日本の福知山線列車事故が発生した日で、今年は10年の節目を迎えます。これに先立って、先日NHKクローズアップ現代で放送された「いのちをめぐる対話 ~遺族とJR西日本の10年~」は日本社会のこれからの安全を考える上でとても考えさせられる内容でした。番組ではこの事故の遺族とJR西日本職員との事故の過程を検証するための対話が地道に進められていることが取り上げられていました。どこの国でもそうですが、大きな事故が起きると、まずはその責任者さがしに奔走しがちです。最近では韓国で起きたセウォル号の転覆沈没事故でもそうでした。しかし責任者探しばかりにエネルギーを注いでも、結局は事故発生の根本的な原因がきちんと解明されず、再び同様の事態を引き起こしてしまいかねません。一方で責任が明確になるのを恐れるあまり、原因追及に踏み込むことを避けてしまっては、これもまた問題解決からは遠ざかるばかりです。個人的な責任追及はいったん留保して、まずは起きた事実だけをきちんと分析することが行われるのに、これだけの時間を要したことに私たちは注目する必要があります。原因解明は責任追及とは別の段階できちんと行われるようにする、これが安全文化の中で一番大事なことではないかとあらためて気づかされますね。
安全は一朝一夕には成立しません。今日たまたまリニア新幹線の実験線で時速600キロ超えが実現されたというニュースが入ってきました。この速度が本当に必要なのかどうか、私にはわかりませんが、このすごい技術が私たちに未知の移動速度の世界への扉を開いたものである限り、事故が起きないように考えられるすべての手続きを行ったうえで、なおリスクがあると思って慎重に利用する姿勢を忘れないでいたいものです。