コミュニティの現状を再整理するために、昨年刊行された内田樹先生の「街場の共同体論」をあらためて読み直してみました。街場の~シリーズはこれまでたくさん出ていて私もいくつか読ませてもらいましたが、毎度感心するのはこの人の文章のうまさと巧みな論理展開による説得性の高さです。共同体論はある意味で著者の日本社会論の総括のようにもみえ、防災の世界でも地区防災計画をきっかけに共同体の在り方が基本から見直されている今だからこそ、研究者には一読していただきたい内容てんこ盛りといったところです。
とりわけ共同体内における「めいわくの掛け合い」の大切さについては、考えてしまいました。つまり防災の世界ではこれまで「自立して」とか「主体的に」とかが前面に出ていて、社会全体でリスクを他者に転嫁し合うことを極力少なくすることがよいことという方程式が出来上がっているからです。自主防災組織の結成率を上げたり、活動を活発化することで、支え合いが大切だという意識が涵養されるのはいいのですが、一方で依存したくても依存できない人たちが出てくるとなると、なんだか本末転倒になった感もしないではありません。地区防災計画の導入についても、特別なことをせずその時はその時と考えるくらいの他者への信頼性、依存性がある社会のほうがよいのだといわれているようで、何とも考えてしまいました。
内田先生は「相互扶助システムというのは、「強者には支援する義務があり、弱者には支援される権利がある」という、不公平なルールで運営されているのです」と言っています。個人や世帯のばらつきが大きくなり、強者と弱者の差が際立ってきた日本社会でも、互助が働く社会にしておきたいものです。