在宅避難という不思議な言葉が使われていますが、災害時には「どこか」に避難せざるを得ない状況はできることなら作りたくないものです。避難所は現実社会の縮図ともいえますが、もし日本社会の平均的避難所を想定すると、私たちはどのようなことに配慮しなければならないでしょうか。ここに1000人の避難所を考えてみましょう。そのうち250人は高齢者です。そのおよそ半分(125人)は75歳以上の後期高齢者です。高齢者250人の内訳は女性のほうが若干多く、150人が女性、100人が男性というところです。子供はどれくらいいるでしょう。年少人口(14歳以下)はおよそ130人ですが、そのうち小学生は70人になるでしょうか。乳幼児も結構いますので、育児のためのさまざまな配慮も欠かせません。障がいのある方々も一緒に避難しています。30人が身体障がい者、5人が知的障がい者、25人が精神障がい者です。なかには障がいがあっても公表しにくい方もいるので、特に気配りが必要です。
私たちは避難所というとよく炊き出し訓練を想定しますが、1000人もいれば何らかの食物アレルギーのある人もいることを忘れてはいけません。厚生労働省によれば全人口のおよそ1~2%の方に何らかの食物アレルギーがあるようですから、それを考えると20人くらいは食事に配慮が必要になります。特に乳幼児はアレルギーの割合が高いので注意が必要です。最後に、一番困った人が避難所に来ない(来られない)かもしれないということを私たちは忘れてはなりません。2007年の新潟県中越沖地震で最も被害の大きかった柏崎市では、市内の各コミュニティセンターが避難所となりましたが、近所にいる障がい者を抱えている家族が避難していないことに気付いた責任者が気をまわして見に行ったおかげで、助かったという事例もあります。このように優れたリーダーのいる地域は幸せですが、本当に困っている人が避難できない社会というのは、できれば作りたくないものですね。