災害に限らず社会的に生じる問題の中には、地域が地域自身で解決しなければならないものがたくさんあります。地域自身というのはとりもなおさず地域の住民自身ということなのですが、最近しばしば聞かれるように、近隣での人付き合いは減る傾向が顕著になっているようです。総務省が設置した「今後の都市部におけるコミュニティのあり方に関する研究会」が行ったアンケート調査で、いくつかの興味深い結果が出ていますので、紹介しましょう。
この調査は平成24年から25年にかけて、東京都港区・葛飾区、仙台市、神戸市を対象にしてポスティングによるアンケート調査を行ったもので、約1300サンプルが得られています。調査項目は地域の暮らしやすさ、住み続ける意思、基本的なライフスタイル指標、近所づきあいの程度や内容、地域活動の課題、つながりの重要性の認識などから構成されています。
まず、「住みやすさ」と「住み続ける意思」の点については、どの地域もあまり差がなく、住みやすいしこれからも住み続けたいという意向が高い割合を占めています。ただ近所づきあいの程度については、仙台市や神戸市の居住者と葛飾区の共住者のほうが、港区の居住者と比べて交流があると答えた割合が有意に高い傾向にありました。特に差が大きいのが港区のマンション居住者で、近所づきあいがほとんどないか、まったくないを合わせると8割を軽く超えてしまいます。共同住宅のほうが壁一枚隣りは他人でありながら、日常での交流が少なくなっていることがうかがえます。私たちはこのような交流がないのはともすれば若い人たちで、高齢者ではそれなりの付き合いがあるのではないかと思いがちですが、実は60歳くらいまでは世代が上がるにつれて付き合いのある割合が高くなっていくのですが、それを超えると低下する傾向にあるようです。いわば孤独な高齢者の存在が無視できなくなってきています。
いざというときに近所の人と協力できるかという問いに対しては、やはり港区のマンション居住者の集団では「あまり協力し合えるとは思えない」や「協力し合えるとは思えない」が、他の地区と比べると高い傾向にありました。とはいえ、「おそらく協力し合えると思う」や「協力し合える」と回答している割合が低いところでも70%近くありますので、いざとなったら近隣共助の関係は期待できるのかもしれません。
顕著な差が出たのは、そもそも最寄りに住んでいる人が「どんな人」なのかがわかっているのかという点です。港区のマンション居住者では半数以上が「ほとんど知らない」と答えています。マンション居住者のほうが世代が若く、ウイークディは共働きで、友人との交流はあっても近隣との交流がない世代である割合が高いとしても、この低さなちょっと気になります。何か問題が起きなければ、できれば面倒な接触は避けたいという現代人の性質が現れているのでしょうか。町内会や自治会への加入率も世代が下がるほど低くなっている傾向にあるようです。