私たちの社会はかつてないほど多様性に富む時代になりました。これまでの社会でも本当は多様な存在だったのですが、社会に存在する目に見えないさまざまな圧力(これを「世間」などといいますが)によって、ある程度の型枠にはめられた生き方を余儀なくされてきた人たちが、いまは堂々と自分の存在を主張できるようになりました。私たちの防災の世界も、その社会の多様性に応じた対策や仕組みを備えていくことが急務となっています。
平成25年版の「障害者白書」によると、障がい(身体、知的、精神)のある方は全人口の約6%を占め、自宅や施設でさまざまな日常的ケアを必要としています。この方々を災害から守るためには、本人の努力だけではなく、周りの理解と支えが不可欠です。茨城県取手市にある「とりで障害者共同支援ネットワーク」は「障がい者のための防災マニュアル」(写真)を作成し、配布する活動をされています。先日行われたつくば市民大学でこのマニュアルを頂戴し、大変よくできているのでこのブログで紹介することにしました。
このマニュアルは5部構成となっています。最初に「取手市の災害」として、地元にどのような災害があるかが、災害の解説やハザードマップ、被害想定などを使ってわかりやすくまとめられています。次に「情報と連絡」として、災害時に一番大事な情報収集と連絡方法に関する解説があります。そして次は「災害への備え」が各障がい共通したものとして、環境整備、災害用常備品、災害が起きたらの順に書かれています。特に「災害が起きたら」のページでは、すぐに避難所に行くのではなく状況を見て適切な判断を下すことの大切さが述べられていて、これだけでも他のマニュアルにはないすぐれた点だといえるでしょう。第4章は「障がいに応じた対応」ということで、肢体不自由、視覚障がいのある方など、各種障害に応じた対応のポイントがわかりやすく書かれています。最後の「避難場所・避難所」は地域にある避難資源の一覧表です。
編集後記にも書かれていますが、障がいという枠組みも実は一人一人の事情にはずいぶん幅があり、決して画一的にはできないことが多いのですが、以前、ある障がい者施設の責任者の方から伺った話の中に、「地域にそういう人がいるのだということだけでも、できるだけ多くの人に認知してもらうことが大切だと思う」といわれたことを思い出しました。まずは地域の多様性を我々も日々正しく認識し、受け入れることから始めたいものですね