2007年10月にほぼ全土に導入されほぼ7年間にわたり運用されてきた緊急地震速報は、観光などで来日される多くの海外の人たちにとっては、大きな驚きをもって迎えられるようです。地震が来る前にアラートが鳴るなんて!というような声は、さすがに科学先進国日本と評価されているのか、あるいはそこまでわかっているのならなぜもっと被害を減らせないのかと訝られているというべきなのか、いろいろ考えてしまいますが、ともあれこの7年間で150回近いイベント(地震)について警報(概ね震度5以上が予想される地震が起きたとみなされたもの)が出されていて、発表実績は気象庁のホームページですべて公開されています。ちょっと興味深いのでこのデータを簡単に整理してみました。
まず、年ごとにみてみると2008年4月の宮古島近海で起きた地震を筆頭に、2014年11月22日に長野県北部で起きた地震まで145の発震があります(正確にはこれより多く発信されていますが、発震直後に訂正されたもの(雷などの原因で生じた誤報)がありますので、ここでは最終的に地震が起きたことによると特定されたものを対象にしてみました)。2008年は9回、2009年は3回、2010年は5回と一桁台が続いていたのですが、東日本大震災のせいで2011年は97回、2012年は16回と2桁の年が続きました。2013年は9回、2014年はこれまでのところ6回です。大きな地震とそれに続く余震がなければ、平年的には警報レベルの地震は数回ということで、決して頻繁に起きているわけではないようにも見えます。月別に見てみると3月が50回とダントツに多く、次いで4月が32回となっていて、これも東日本大震災の本震と余震による影響が明確です。面白いのは発表時刻で昼の12時台が最も多く10回なのですが、それを除けば昼間の時間帯は比較的少なく、夕方から深夜にかけてと、早朝2時から8時にかけてが意外に多くなっています。なんだか寝入りばなや、目覚める前に発信される傾向があって、受け取る側にはあまり嬉しくない状況ですね。
興味深いのは予測された震度と、実際の震度とがどの程度一致していたのかという点です。予測されたものの揺れが観測されなかったケースもあるので、これを除いた139の地震についてみると、予想震度よりも観測震度のほうが大きかったものが45地震(32.4%)、予想震度と観測震度が一致したものが31地震(22.3%)、予想震度が観測震度より大きかったものが63地震(45.3%)となっています。なかなか微妙なところですね。大きめに予想されたものと、一致したものとを「当たり」と判定すれば、当たりが約3分の2ということで、3分の1は予想以上の揺れになることもあるということを意味しています。予測精度を高めることはとても重要なことですが、いまの技術ではこの程度の精度でも上手に防災に生かすことを意識しないといけないということでしょうか。
東日本大震災の後、12日間の緊急地震速報が出されたタイミング【横軸】とその地震規模【縦軸:マグニチュード】。最初の1日(24時間)では一時的に集中して地震が起きていたことがわかる。5日目や10日目にはまる1日以上出なかった時もあった。