12月に入って生じた寒波の襲来により各地で大雪が発生し、ところによっては集落が孤立する事態が生じています。内閣府が平成22年に取りまとめた孤立可能性集落は農業集落だけでも17,000を上回っています。ただそれらはおおむね地震や風水害による土砂災害を想定したもので、今回のように大雪で道路が不通になり、さらに停電が生じるという事態は、孤立集落の要件定義には明記されていません。加えてIP電話の導入で停電時に安否確認ができないとなると、孤立した地区の状況把握はなかなか大変だったろうと想像されます。2004年の新潟県中越地震で話題になった住民による上空からみて視認されるような地表へのサインのような、ある意味で原始的な手段も重要になってきます。ハイテクだけに頼らず、ローテクも必要だというよい事例です。
孤立集落が生じる可能性を都道府県別にみると、最も多いのは長野県で約1300集落に上ります。次いで広島県や大分県、高知県などが高い値となっています。一方で孤立可能性のある集落が少ない都道府県は沖縄県(1)、千葉県(35)、そして茨城県(81)がベスト3となっています。これらの県はいずれも山地が少なく、どの居住地区にもアクセスしやすい(複数ルートでアクセスできる)というメリットがあります。起伏に富まない地形は単調でつまらないかもしれませんが、一方で地域の高いアクセス性は防災では大事なメリットということになります。1995年の兵庫県南部地震でも、神戸市街地のアクセス性がもっとよければ、被害の状況は変わったかもしれません。
これまで地域防災活動でマップ作りを進めている地区をたくさん見てきましたが、概ねその地区内での活動を前提としたものがほとんどで、外からの支援のしやすさ、あるいは孤立したときにどうするか、ということはあまり議論されませんでした。我々がかかわった地域で唯一その議論が行われたのは新潟県中越地震で被災した山古志村(現長岡市)でした。やはりあの被災経験があってこその問題意識の共有だったのかもしれません。高齢化が各地で進み、相互支援も容易でなくなっている今日、自らの地域(地区)のアクセス性や外部支援可能性も重要な点検項目になってきています。
つぼつぼのprofile
国立研究開発法人 防災科学技術研究所
防災情報研究部門
所在地
茨城県つくば市天王台3-1