立冬が過ぎ、秋から冬への季節変化も着実に進みつつあります。冬季の代表的なリスクといえばインフルエンザと火災というところでしょう。今回は火災の中でもいま注目されている「着衣着火」について紹介しましょう。独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の製品安全センターがまとめた「着衣着火事故の防止について(注意喚起)」(平成23年1月)によれば、平成17年度から平成21年度までの5年間で86件の着衣着火事故が発生しているそうです。ここで着衣着火というのは、ガスコンロなどを使っているときに、その火が着ている衣服に燃え移ったりする事故で、やはり原因としては火の燃え移りやすいものを着たまま熱源の傍にいることで、不注意によるものが割合としては多くなっているようです。被害にあった人たちの年齢分布も公表されていますが、70代、80代に特に集中していて、この事故が高齢者にとって危険なものであることがよくわかります。
火災の発生を月別にみると大方の人の想像に難くなく、夏場は少なく冬場は多くなっていて、11月から2月までが件数が多く、3月以降になるとだいぶ下がってきます。調理という行為は一年を通して行われるにしても、寒い季節に長袖の着衣でうっかりコンロの操作などをしていると、思いがけず繊維に火が燃え移りますので、特に注意しておきたいところです。とりわけ高齢者の方で火を取り扱うことを日常的になさっている方が家族にいる場合には、周りでも気を配ってあげないといけないでしょう。もちろん防炎製品(エプロンやミトンなど)を使うことも効果的ではありますが、わざわざそういうものを準備するほどの慎重な方なら、火災事故など起きないような気がしないでもありませんね。 もし着ているものに火が移ったら、即座に脱ぎ捨てたり、水をかぶって火を消すなどの迅速な行動をとることが薦められていますが、これもまた動作が緩慢な高齢者にとってはなかなか難しい行動です。できれば平時からキッチンの火を扱うところは整理整頓し、このような事故の起こりにくい環境にしておくことが何より大事かもしれません。
台所は整理整頓が第一・・・・
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