昨年の台風による伊豆大島の土砂災害や、今年の広島での集中豪雨による土砂災害を見ていると、直前にでる土砂災害警戒情報だけに依存した避難には限界があることは明らかです。とはいえ、大雨警報や洪水警報が出たくらいでどんどん避難するという地域も現実にはほとんどありません。こうなると災害が目前に迫ってきたときに、命だけは何とか守る仕組みの整備が必要です。特に高齢者や障害者など、避難に時間を要したり、外からのサポートが欠かせない場合はなおさらです。そこで必要なのは近隣への避難です。広島市の土砂災害でも、わずかな移動距離にある臨戸に一時的に移動さえしていれば助かったのではないかと思えるケースがありました。いわゆる都市化はこのような近隣での相互支援の関係を難しくする要素でもありますので、現代日本では都市化が進んでいるところほど、このような近隣避難支援が難しくなっているように思われます。
住宅は日本では高い買い物ですし、災害のためにそれを失うことはその人の人生にとってとても大きな出来事です。最近公開された平成25年の住宅土地統計調査には東日本大震災によって被災した人たちがどのように移動したかを追跡した結果もまとめられています。それによると持ち家を失った人のおよそ3分の1しか持ち家を再建していない(残りの3分の2の人たちは賃貸などの生活に変わった)ことがわかります。持ち家が良いのか、賃貸が良いのか、いろいろな意見があると思いますが、持ち家のままで生活したいと希望しても、現実にはなかなか難しいので賃貸で当座をしのいでいる方も多いのではないかと思います。持ち家を確保することは、同時にその地域である程度継続して生活することの重要な決断でもあります。そうなれば当然、地域、近隣の住民とのかかわりを無視して住み続けることは無理があります。買うときには高い家なのですから、買う前に地域の関係性もきちんと調べるべきなのでしょうが、なかなか難しいですね。もう30年くらい前になりますが、カリフォルニアの地震の調査でロサンゼルスに行ったときに、書店で住宅の購入に関するものを眺めていたら、家を買う前にその地域に朝、昼、晩に行って、どのような人たちが往来しているか観察することを勧めているものがあり、興味をひかれました。日本の住宅情報誌は家そのものの情報はたくさん載せていますが、その家のある街の情報はほとんど載せていません。家を買うことは、家だけでなく街を買うことでもあるのだという意識は、日本ではまだまだ不足しているようです。