いばらき防災大学での講義も無事終わり、少しほっとしています。私の次の時間の講座内容は「放射線の基礎知識について」ということですので、まさにハザードそのものの講義ということになりますね。放射線はリスクに至る過程がなかなか難しい(たいていは健康リスクですが)ので、例えばシーベルトやベクレルという基礎単位でもあれだけ混乱したのですからさぞかし大変でしょう。実はこれらの「単位」も、人の健康に与える影響を理解するためには確率的な表現を使わなくてはならないことを私たちは十分に理解していないかも知れません。低線量での被ばくは、長い時間でどのような影響が出るかを確定的に表現することができないからです。被ばくした人ががんになる確率というような形でしか表現できないし、理解できないのです。
震災後、全国のほとんどの自治体でハザードマップが整備されました。しかしそこに表現されているハザードがかなり幅を持ったものであって、条件がちょっと違えば結果に大きな差が出てくることも、本当はきちんと理解しておかなければなりません。しばしば見られるのは、地域で行われる防災のワークショップで議論を始めるときの前提として、既存の被害想定をもう絶対的な現実として、あたかも運命のように受け入れたところからスタートしてしまうことです。このようなことがないよう、ハザード評価は確率的で幅を持ったものであることは、大抵の被害想定資料やマップそのものに付記されてはいますが、あたかも我々がいろいろな家庭用品を買う時にその取扱説明書を隅々まで見ないこととよく似て、多くの人が注意を払っていないのは残念なことです。
確率的でなく、決定的なものであれば、それはすでにリスクではなくなってしまいます。リスクが持つこの不確実性の高さこそがその取扱を本質的に難しくしている原因なのですから。