御嶽山の噴火で多数の犠牲者が出たことも影響してか、火山災害に関心が高まっています。昨日行われた山梨、静岡、神奈川の3県合同による富士山避難訓練は、にわかにメディアの注目を集めるものとなりました。富士山が活動的で常時監視が必要な火山であるという認識は、それほど昔からあったわけではありません。東海地震説が広まる中、1987年ごろに山頂付近で有感地震が発生し、にわかに地震と火山との関係が取りざたされたりして、やはりハザードマップをちゃんと作らないといけないという機運が盛り上がったように思います。平成になってから漸く富士山ハザードマップが関係者の協力で制作されましたが、それでも観光産業へのネガティブイメージへの懸念などリスク表示については否定的な声も上がっていた(今も上がっているのかも)ようです。もちろん宝永年間の噴火も含めて過去の火山活動は専門家によってずいぶん調べられてはいますが、なにぶん首都圏から見て富士山の噴火による影響は極めて甚大で、私もかつて関わっていたプロジェクトで宝永噴火による影響範囲の人口を調べたことがありますが、降灰範囲で2600万人を超えるというような値も算出され、プレート境界型の地震の想定よりもはるかに悩ましい事態であることがわかりました。地下から供給されるマグマが大量であれば、桜島のように灰との戦いにならざるを得ないでしょうし、地震と異なり火山活動は長引くこともしばしばありますので、そうなった場合には首都機能の移転なども現実的な問題になりかねません。危機管理の題材としては、最悪のシナリオまで頭に入れておかねばならないケースとなるでしょう。
平成9年に火山災害を研究するプロジェクトで噴火シナリオを作成したのですが、その際には最初に防災科研の深井戸で火山性微動が観測されるとしていましたが、いま考えるとこれは少しおかしな設定だったように思います。現在は富士山を取り巻くように7か所の連続観測網(6か所は防災科研、1か所は山梨環境研)が張り巡らされており、このデータは常時公開されています。【サイトはこちら】もし火山活動に異常があり大規模な噴火につながるものであれば、ここに何らかの異変が表れてくるでしょう。しかし今回の御嶽山のように地理的に限られた(狭い)範囲でしか異常が認められなかったものでは、もしかすると前兆が捉えられないで、いきなり爆発のようなものが起きるかもしれません。我々はいつでも異常があれば、直ちに危険を回避する(富士山の場合は登山を断念する)決断が必要です。世界遺産に登録されたことで毎年きわめて多くの登山者でにぎわう富士山ですが、火山としてみた場合、標高が高いだけにリスクを回避する手段が限定されていることに不安を感じるのも事実です。安全な登山はやはり無理をしないこと、そしてリスク情報を受け取ったら迷わず意思決定することに尽きるのかもしれません。