昨年の伊豆大島豪雨、今年の広島豪雨、そして御嶽山の噴火災害と、数十人規模の自然災害が続いていますが、これらの災害は台風、前線、火山噴火と、その原因は異なってはいても、災害発生までの時間的猶予がなかったという点は共通しています。高齢化によって対応速度に限界がある人たちが増えている現在、余裕のある避難行動、対応行動がなければ、命の危険は増すばかりという状態です。小さな災害が起きにくくなった社会に住む我々としては、めったに来ないけれども、来たら命にかかわるような事態を、自力で乗り切れるような環境の整備が不可欠です。
土砂災害への危険性理解と、危ないところに住まないための施策が重要という観点から、土砂災害防止法の改正が健闘されていますが、既に現行法制定に際して議論された河川審議会の答申(平成12年2月)には今見ても重要な事項が明記されています。施策の展開にあたり考慮すべき重要事項として、
「防災対策を進めるに当たっては、行政と住民が常に情報を共有し、役割を的確に分担する社会システムの構築が必要であり、行政側の「知らせる努力」と住民側の「知る努力」とが相乗的にはたらかなくてはならない。」と書かれていますし、想定外の災害についても、
「以上のような安全水準への適合や警戒避難措置による対応を図っても、通常想定されるレベルを超える土砂移動現象が発生した場合には被災する可能性があり、危険な地域に居住することにはリスクが伴うものであることについて国民の理解を得る必要がある。」
と書かれています。まるで今日起きる災害を見通すような言い方ですね。
私たちはある程度のリスクを冒しても、それを超える上回る利便性や快適性を取る選択をすることが多くなっています。御嶽の災害もそういう意味ではリスク選択問題と自己責任問題を象徴する出来事とも言えるわけですが、このような悲劇が繰り返されないよう、適切なリスク情報、ハザード情報の提供方法について、我々はもっと努力する必要があります。今日は我々のチームが主催して自治体職員の方々を対象とする災害時の情報共有を考えるシンポジウムが東京国際フォーラムで開催されます。多くの知見や認識が交換され、有意義な集まりとなることを期待しています。