広島豪雨災害で被災された方たちの中には、被災地で踏みとどまれる方もいれば、残念ながら移住を余儀なくされる方もいるでしょう。最近は防災の世界でもリジリエンス(復元力、粘り強さ)を研究テーマにする研究者も増えています。いわば災害に対する「打たれ強さ」なのですが、肉体的な健康状態と同様、経済的な健康状態は災害時のリジリエンスに大きく影響します。資本主義経済の中ではお金があるということがいろいろな面で有利になることは仕方がないということでもあります。
いのちを守るのが災害での最優先課題ですが、次に問題になるのは住まいの部分でしょう。特に今回の土石流災害のように家の周りも家自体も、大きく被災してしまうと、元と同じように復元できなくなる可能性もあります。土石流や地滑り、がけ崩れなどの地形災害はこの点が悩ましいところです。仮に住宅ローンを抱えている状態のまま被災して新しい家を購入するとなると、二重ローンになる可能性もあります。家を持つということは、同時にリスクも抱えるということを、私たちは今一度再認識する必要がありそうです。
家なんか持たないほうがいいじゃないかと言って、一生賃貸で暮らすという選択をする方も特に若い世代には少なくありません。最新の国勢調査(平成22年)で持ち家率を調べてみると全国平均で約62%。およそ3分の2の方が「自己所有の家」に住んでいることになります。この割合は地域によってずいぶん違います。持ち家率が高い市町村を上位から示すと、1位:鮭川村(97.7%)、2位:山添村(97.7%)、3位:千早赤阪村(97.1%)、4位:南山城村(97.0%)、5位:多賀町(96.8%)となっています。鮭川村は山形県、山添村は奈良県で、上位に来る自治体はいわゆる町村ばかりです。上位100位に入っている自治体のうち、「市」であるのは石川県珠洲市だけで、あとはすべて村か町となります。珠洲市も本州にある市の中では最も人口が少ない(約1万5千人弱)ですので、地方都市に行けばいくほど持ち家率が高いという構図は普遍性がありそうです。
一方持ち家率が低いところはどうでしょうか。最も低いのは大阪市浪速区(15.2%)、以下、小笠原村(16.4%)、福岡市博多区(23.6%)、福岡市中央区(28.6%)、大阪市西成区(29.7%)、大阪市東淀川区(29.8%)と続きます。小笠原村は高齢者人口比率が全国最低ということで、その影響もあって持ち家が少ないと思いますが、それ以外は概ね政令指定都市の中の「区」になります。持ち家率の低さ上位100位くらいまでは政令指定都市か、東京特別区がほとんどです。
リジリエンスの高さ、低さは、おそらくこの持ち家率とかなり良い関係がみられるのではないかと思います。そこに住み続けたいかどうか、それが地域防災の原動力になるのであれば、地域を住み続けたいようにするにはどうするのか、何を変えればよいのかという視点で、防災WSでも議論が行われることが望ましいですね。