先月20日に発生した広島市の土砂災害の調査で、昨日から広島に来ています。この災害は市の北部、安佐南区、安佐北区を中心に非常に狭い範囲に急激に起きた強い降雨で引き起こされました。防災科研の水土砂チームが解析した結果では、「バックビルディング現象」と呼ばれる積乱雲が林立するビルのように見える状態が生じていたことがわかりました。安佐南区の八木地区や緑井地区など、今回特に被害が大きかった地区が土砂災害の面で抜きんでて危険だったというわけではなさそうです。もちろん住宅のごく近傍まで山が迫っている地形は決して安全なわけではありませんが、同様の地形は周辺にはたくさんあり、土砂災害危険地区指定の在り方を見直すきっかけとなった1999年の広島豪雨の際には、今回の被災地より西側で被害が起きましたが、八木地区や緑井地区では被害はありませんでした。これを見るとこのくらいの拡がりで起きる気象現象は、まさにあたりどころが悪かったとしか言いようがなく、同様の事態が起きるところは全国にいくらでもあるということを考えなければいけません。
日本の都市には斜面が景観を形成するうえで重要な役割をしているところがたくさんあります。特に港町と呼ばれるところは、横浜、神戸、長崎など、大抵は斜面都市になっています。斜面がもたらす美しい景観は同時に生活上のさまざまな不便を抱えるものでもあります。傾斜が急なため上り下りには足腰に負担がかかり、高齢者にはつらい環境です。地区ごとに防災戦略を市民自身が立てることのできる地区防災計画制度では、このような地形的特徴をどうとらえるかも、ポイントの一つになりそうです。
広島では地形災害がある意味で際立ったところゆえに、たくさんのハザード情報が以前から公開されているのですが、それでも1999年に起きた災害とほぼ同じような事態を2014年では防げませんでした。明日は我が身と思う意識は、なかなか難しいということの表れともいえそうです。