行方不明になると警察に捜索願(行方不明者届)を届け出るのが一般的なのですが、これがどれくらいの数になっているか、普段私たちはあまり意識していないのではないでしょうか。警察庁は毎年行方不明者の状況を取りまとめ公表しています。これによると平成25年一年間で行方不明の届けが出された件数は約8万4千人で、前の年より2800人以上増加しています。年々の傾向を見ると、平成22年ころに底があり、その時点で80655人でした。このところやや増加気味なのが気になります。
この行方不明という状況には、かなりはっきりした性差があり、男性が64.2%、女性が35.8%と、明確に男性が多くなっています。自殺もそうですが、男女で差がある現象には社会とのかかわり方の違いが色濃く表れていると思われます。また、年齢別に見ると、最も多いのが10代で約2万人、次いで70歳以上が約1万5千人となっています。10代のいわゆる家出はもしかすると経験のある方も多いかもしれませんが、高齢者になるとやはり認知症との関係が気になります。警察庁では家族からの届け出に際して、認知症またはその疑いがあると申し出があったものを区別しており、その数は10,322人となっています。最近は特に単身高齢者が増えていますので、仮に行方不明状態になっても家族から届け出を出されないことも不思議ではありません。ですので、この認知症により行方不明という事態はもっと多いのかもしれません。先にNHKの放送のおかげで他県の施設に収容されていた認知症高齢者が家族のもとに戻れたというような報道もありましたね。
行方不明になった人のうち、発見された人の数は約8万2千人です。その差、およそ2千人が行方不明になったままであることになります。行方不明になってから発見されるまでの期間については、当日のうちが最も多いのですが、中には2年を超えて行方不明から発見されるケースもあり、その中には残念ですが亡くなられて発見される方もいます。こうなると助けられなかった家族の方々の心痛は察して余りあるものがあります。
災害のような非常時においても認知症高齢者の行方不明は発生が阻止できません。むしろ避難による居住地の移動や環境の変化で、認知症患者の症状が進むこと(リロケーション・ダメージ)があり、いっそう行方不明になる危険性が高まります。地域でどうやって行方不明の高齢者を出さないようにするかという取り組みもまた、急務となっています。