介護保険が導入されてはや15年、この間の社会の変化が制度のあり方にいろいろ影響を与え、見直しが進められていますが、社会全体で高齢者を支えていくという基本的な枠組みは維持されています。日本では当たり前になった介護保険ですが、実はこの制度は他の国々ではあまり一般的なものではありません。国民皆保険制度の中で運営されているのはドイツと韓国くらいで、あとは任意加入の制度になっているところがほとんどのようです。日本は高齢化率が飛びぬけて高いので、まさに必要に駆られて制度をスタートさせたわけですが、では、その現状はどうなっているでしょうか。
国民生活基礎調査でも介護世帯の状況については調査項目に含まれています。被介護者(介護を受ける側)から見ると、施設に入って介護を受けている人と、家庭内で家族等によって介護されているケースがあるわけですが、この調査では前者は調査対象から外されていますので、主に家庭で介護を受けているか、一人暮らしで通所などの介護サービスを受けている人が対象となります。要支援および要介護の度合い別に見ると、世帯人員の多い世帯ほど介護度が高い人を抱えていることがわかります。ただし要介護者のいる世帯について見ると、単独世帯はその数を増していますので、災害時には「一人暮らしで介護を必要としている人」の地域での安否確認は、ますます重要になってきています。
防災の立場から見ると、介護者(介護をしている人)と被介護者(介護を受けている人)とはワンセットで考えねばなりません。地域に要援護者がどれだけいるから避難所にはこれだけの物資やスペースがあればいいと単純に計算しがちですが、実は介護をする側の人も一緒に避難してくるわけで、その人たちの分もきちんと織り込んでおく必要があります。特に要介護3を超えると、ほとんど終日の介護が必要となっているという答えが増えています。まさに家族と一心同体で生活できる環境を災害時には整備する必要があります。
どのような年代の人が、どのような年代の人を介護しているかということがわかる資料もあります。これを見ると介護のタイミングには2回のピークがあることがわかります。最初のピークは40代から60代くらいにかけて70代から80代の人を介護するケースで、これはいわゆる「親の介護」にあたります。次に70代から80代にかけて、同じ年代の人を介護するケースで、これは「配偶者の介護」にあたります。介護を社会的にするといってもまだまだ家族の負担は大きいです。介護の山をうまく乗り切るために何をすべきか、私たちももっと知恵を絞る必要があります。