国民生活基礎調査から日本の世帯当たりの所得(年収)を見てみると、全世帯では平成6年の664万2千円をピークに下がり続け、最新の平成25年では537万2千円となっています。高齢者世帯については平成10年(335.5万円)がピーク、児童(18歳未満の未婚の子)がいる世帯では平成8年(781.6万円)がピークでいずれも低下傾向です。これは経済成長率の低下で給与が下がったというのではなく、現役世代からリタイヤする世代が増えているためで、まだしばらくはこの傾向が続くと思われます。世帯収入にはいろいろな要素があり、単純平均だけで理解しようとするといろいろ勘違いしかねないことがあります。たとえば平成25年の1世帯当たりの平均所得金額537万2千円ですが、これは世代による差がかなりあり、29歳以下の世代では323万7千円であるのに対して、50代では720万4千円と2倍以上の開きがあります。世代間格差が生じるのは日本型の年功序列型の給与体系がまだしっかり根付いているからでもあり、いくら成果主義といっても経験や責任の重さも全く無視して賃金が決まってくるというわけではありません。
世帯の所得金額を階級別に並べて頻度分布をみてみると次の表のようになります。
世帯収入ランク | 度数(%) | |
100万円未満 | 6.2 | |
100万円~200万円 | 13.2 | |
200万円~300万円 | 13.3 | 最頻値階級 |
300万円~400万円 | 13.2 | |
400万円~500万円 | 11.0 | 中央値432万円 |
500万円~600万円 | 9.0 | 平均値537万円 |
600万円~700万円 | 7.3 | |
700万円~800万円 | 6.5 | |
800万円~900万円 | 5.2 | |
900万円~1000万円 | 3.8 | |
1000万円~1100万円 | 3.0 | |
1100万円~1200万円 | 2.0 | |
1200万円~1300万円 | 1.5 | |
1300万円~1400万円 | 1.1 | |
1400万円~1500万円 | 0.9 | |
1500万円~1600万円 | 0.6 | |
1600万円~1700万円 | 0.5 | |
1700万円~1800万円 | 0.3 | |
1800万円~1900万円 | 0.2 | |
1900万円~2000万円 | 0.2 | |
2000万円以上 | 1.0 |
平均値よりも中央値(データを低いほうから高いほうに並べて、ちょうどデータ数の半分になるところの値)が小さいということは、平均よりも低い人の数が多いことを表しており、実際537万円より多い収入の世帯は約39%で、残り約61%の世帯は平均以下ということになります。さらに最頻値階級が200万円~300万円にあるということは、世帯の代表的所得として考えるのは単純平均よりもずっと低い値を想定したほうが、場合によっては(例えば防災などでは)適切なこともあるということを物語っています。
単純平均537万円よりも低い世帯の割合は全世帯では先述の通り約61%ですが、高齢者世帯では90.1%、さらに母子世帯では95.9%となっていますので、災害弱者として世帯を見る場合(例えば仮設住宅での生活水準の設定など)には、この全世帯平均所得を基準に考えるのは適切ではないと思われます。
一方高齢者に関しては、所得は確かに下がっていますが、資産が結構大きいものがあるのが日本の特徴です。高齢者はストック・リッチ、フロー・プア、つまり年収は少ないが資産が豊かなため、例えば高齢者を狙った詐欺などの標的にされやすいのですね。