高齢者世帯と同じように災害弱者になりうる候補として子供のいる世帯があります。18歳未満の未婚者をこの調査では「児童」と呼んでいますが、児童がいる世帯は約1200万世帯で全世帯の4分の1くらいになります。27年前の昭和61年にはおよそ半分の世帯に児童がいたのですから、ずいぶん急速に子供のいる世帯は減っていることがわかります。
子どものいる世帯では母親が出産、育児の関係で、それまで仕事をしていても離職せざるを得なくなるケースが想像されます。0歳児の母親が無職である割合は約63%です。これが児童の成長に伴い徐々に少なくなり、児童の年齢が15歳から17歳になるとおよそ23%にまで減ります。では働き始めた母親が正規労働者になっているかというと実はそうでもなく、非正規雇用でいる人が多くなっています。児童ありの母親の34.6%が非正規労働者として働いています。これには正規労働者では時間が拘束され、育児との両立が難しいことも少なからず影響していると思われます。ただし良く言われるように、労働者(母親)が常に正規労働者を志向していると決めつけるのはどうかと私は思います。むしろ現代は働き方の自由が確保できるような時代になったのだと受け止め、勤務時間や労働環境など、働く側に立った環境の改善をもっと進めて、自分にとって好ましいスタイルで、(子供がいても)働くことのできる選択肢を増やすほうが重要に思います。
防災においても家の耐震化に象徴されるような伝統的な防災対策による効果ももちろん大事ですが、就業や雇用の不安定化に伴う経済面での脆弱性対策も極めて重要です。人生には予期できない事態もいろいろありますし、介護などで離職を余儀なくされる人が年間10万人に達するとなると、その人たちの経済面での脆弱性増加が一番気になるところです。