65歳以上のいわゆる高齢者がいる世帯で三世代同居が急速に減っているという話を前回書きましたが、高齢者世帯の暮らしはどうでしょう。「高齢者だけの世帯」もしくは「高齢者+18歳未満の子だけの世帯」をこの調査では「高齢者世帯」と呼んでいます。成人が同居していない世帯ということで、防災の上では最もわかりやすい災害弱者候補になります。この高齢者世帯は、いわゆる一人暮らしの「単独世帯」とそれ以外とに大別されます。高齢者世帯1161万世帯のうち単独世帯は573万世帯もあり、およそ半分は単独世帯であることになります。さらに性別にみてみると、男性の単独世帯は約166万世帯であるのに対し、女性の単独世帯は407万世帯にのぼり、3倍ほども差があります。実は昭和61年時点ではこの差は4倍もあったので、最近は男性の単独世帯が伸びてきているのは確かですが、やはり女性のほうが男性より長命のため、最終的には高齢者女性が一人で残されることが多いことが統計には表れています。そう考えると高齢者が多い避難所などでは女性の割合が高いことをもっと配慮して整備する必要がありますね。
年次 | 男の単独世帯 | 女の単独世帯 |
昭和61年 | 246 千世帯 | 1035 千世帯 |
平成25年 | 1659 千世帯 | 4071 千世帯 |
では単独ではなく家族と一緒に暮らしている高齢者には世帯構成の変化がどう生じているでしょうか。これを該当者の数(人数)で整理したものが下表です。
年次 | 単独世帯+夫婦のみの世帯 | 子夫婦と同居 | 配偶者のいない 子と同居 | その他 |
昭和61年 | 32.1% | 46.7% | 17.6% | 3.6% |
平成25年 | 56.2% | 13.9% | 26.1% | 3.8% |
一口に「子と同居」といっても、以前は「子供とその家族と一緒に暮らす」ことが多かったのですが、最近ではそれはまれなことで、夫婦のみの世帯や単独世帯の伸びもさることながら、配偶者のいない子と同居が意外に多くなっているのです。まさにサザエさんの磯野家はいまはなかなか見られない家族形態になってきました。以前はパラサイトシングルなどという言葉も流行りましたが、成人しても親と同居して生活費を節約できることに魅力を感じる人たちも少なくないと思います。後で触れたいと思いますが、実は家族介護の問題についてもこの集団についてどう課題をとらえるかということが重要になります。
男性に単独世帯が多くなってきていることについて、防災面で一つ気になるのは、男性のほうが社会的孤立の割合が高いことがこれまでのさまざまな社会調査で分かってきている点があります。このことが仮設住宅などでの孤独死(孤立死)につながる可能性があるとなると、まさに男性単身被災者には特に配慮が必要です。男やもめに蛆がわき、女やもめに花が咲くとはよく言ったものですが、男の一人暮らしでもせめて身だしなみくらいは人に嫌われないように周りも気配りしないといけませんね。