先日、平成25年度の国民生活基礎調査の結果が公表されました。この調査は日本で生活するあらゆる人たちの保健や医療、福祉、社会保障、所得などについて調査を行うもので、昭和61年(1986年)以降毎年実施され、3年ごとに大規模調査がされています。今回の調査は3年ごとの大規模調査(第10回)にあたります。この調査が重要なのは、私たち一般国民の暮らしぶりがわかるからで、それはとりもなおさず防災においては守るべき対象がどのような状態であるかをビビッドに表しているからにほかなりません。これから数回、この調査から防災の視点から見えてくるものについて整理してみたいと思います。
最初に「世帯」というものの変化について見てみましょう。世帯というのは「住居および生計を共にする者の集まり又は独立して住居を維持し、もしくは独立して生活を営む単身者をいう。」となっています。日本社会は戦前の多世代負同居型の大家族世帯から、高度経済成長期に核家族化が進展し、さらに単身世帯や高齢者夫婦だけの(老々)世帯、あるいは高齢者と成人した未婚の子が同居する世帯が増えてきています。私を始め社会防災の研究者の多くは、このような世帯構造の変化が災害に対する脆弱性とどのようにかかわるのか特に注目しています。
世帯の構成員の数と世代に注目した区分が「世帯構造」と呼ばれる区分で、こちらでは単独世帯、夫婦のみの世帯、夫婦と夫婦の子のみの世帯、ひとり親と未婚の子のみの世帯、三世代世帯、その他の世帯に分けられます。調査が始まった昭和61年と今回の平成25年との27年間の変化を見てみると、次のようになります。
世帯構造 | 昭和61年 | 平成25年 | 増減 |
単独世帯 | 18.2% | 26.5% | +8.3% |
夫婦のみの世帯 | 14.4% | 23.2% | +8.8% |
夫婦と未婚の子のみの世帯 | 41.4% | 29.7% | -11.7% |
ひとり親と未婚の子のみの世帯 | 5.1% | 7.2% | +2.1% |
三世代同居 | 15.3% | 6.6% | -8.7% |
その他の世帯 | 5.7% | 6.7% | +1.0% |
こうしてみると、「三世代同居世帯」や「夫婦と未婚の子のみの世帯」がぐっと比率を落としたのに対して、「単独世帯」や「夫婦のみの世帯」が大きく伸びています。「ひとり親と未婚の子のみの世帯」はいわゆる母子世帯、父子世帯ですが、これも少しずつ増えてきています。昭和61年は世帯数が3800万くらいで、平成25年の約5500万世帯と比べると7割くらいになるので、+方向への実質的な(量的な)変化はずいぶん大きいものがあります。
災害弱者として最初に考えられる高齢者世帯(65歳以上の人がいる世帯)について見ると、全体よりも変化の傾向が際立って現れているものがあります。それは「三世代同居世帯」なのですが、昭和61年には高齢者世帯の約45%が三世代同居でした。つまり高齢者は「同居している多世代家族の中で守られる存在」だったわけです。ところが平成25年ではその割合が約13%にまで低下しています。変化率は-32%と際立って大きくなっています。高齢者が同居家族によって守られるという構図はいまや過去のものになりつつあります。この背景には2000年から導入された介護保険による施設介護の進展もあるでしょうが、老いては子に従えではなく、老いては子に迷惑をかけないという親心?の表れなのかもしれません。地域社会での支えも希薄になっている現代で、どうやって高齢者を弱者にしないようにすればよいか、支えの構図を常に考えていくことは大事なことですね。