災害で被災するのは人だけではなく、そのペットもまた被災者であるという認識が高まっています。ペットフードなどを製造している会社を会員としている「一般社団法人日本ペットフード協会」の調査によると、全国で犬をペットとして飼っている世帯はおよそ15%、猫を飼っている世帯はおよそ10%だそうです。飼われている頭数は2000万匹を超えていますので、子供の数とさほど変わらないほどの数になるわけですね。人と違って言葉による意思疎通が難しい(中にはペットと会話ができるという人もいるそうですが)ペットにとって、飼い主はある面で命綱でもありますので、災害で飼い主に被害が生じることでペット自身も危機に直面することは容易に想像できます。時には避難のためにやむなく自宅に置き去りにされるペットもあるようです。
ペットを災害から守るにはどうすればいいでしょうか。もはや家族の一員といってもいいペットの存在は、被災者にとって大きな心の支えにもなるわけで、たとえ避難所に行ったとしてもできれば離れたくないという人も出てくるでしょう。私たちが地域で実施する防災ワークショップでも、地域課題の一つとしてペット問題を取り上げるところも少なくありません。これまでの避難所運営の常識ではペットに対してアレルギーや生理的に苦手な方もいることから、一般避難者とは同衾させないというのが一般的でした。そのためには避難所となるところにペットが収容される専用スペースをあらかじめ確保しておく必要があります。
人には具合が悪ければ訴えもするわけですが、ペットではそれも難しい時があります。犬には汗腺がないそうで、例えば今のような暑い時期に閉め切った空間に放置されると、いわゆる熱中症に陥ることも珍しくないそうです。一人暮らしで自分のために飼っているペットが、飼い主の外出中に具合が悪くなってしまったという経験がある方の記事が先日の新聞に出ていましたが、こうなると獣医科での診察を余儀なくされます。災害時にはとてもそこまで対応できないかもしれません。飼い主の責任として、ペットの健康維持のための水や非常食など(自分のものと同じように)準備しておくことが大事ですね。
東京都新宿区では「いざという時に災害からペットを守るために」という冊子を公開して、広報、啓発活動に努めるとともに、区と獣医師会とで協定を結び、災害時の支援を進めています。こういう取り組みを是非各地で拡げていただきたいものです。