最近ではどこの地方都市に行っても、主な街道沿いには大型店舗が並んだりファストフードの店の看板が林立していたりして、なんだかあまり地方に来たという印象が持てないところが多くなりました。北海道から九州まで、少なくとも都市部においては風景に地域差を感じられなくなっている方も多いのではないでしょうか。駅や空港などのターミナルでも食べものや飲み物にも差異が少なくなり、郷土色が無くなっているのはちょっとさびしい気もします。
では防災のレベルに関して日本の地域差はどれくらいあるのでしょうか。北海道に行くと瓦屋根の家はほとんど見当たりませんし、一方で九州に行くとトタン屋根は少なく、瓦をきっちりと屋根に固定している家が多くみられます。これは台風などの強風にも耐えられるような建物が求められる九州と、雪の重さが加わるため屋根はできるだけ軽くしておきたい北国との違いで、それぞれの気候風土に見合った住宅はそこで生活するために必要な機能が満たされて作られていますので、実は比べるのは簡単ではありません。
とはいえ、一つの目安として耐震性をとってみてみますと、いろいろ面白いことがわかります。国土交通省は構造物の耐震性を所管する重要な省庁ですが、以前に大臣会見で耐震化の進捗状況を報告した資料がネットで公開されています。建築物については昭和56年(1981年)に建築基準法が改定され、そこで定められた新たな耐震基準(現行の耐震基準)を満たす建物と、それ以前の建物で現行基準を満たさない建物とが存在しているわけですが、年々老朽化した建物が更新されていく過程で、徐々にストック全体の耐震性は向上してはいます。平成10年での住宅耐震化率は約68%でしたが、平成15年度では約75%、平成20年度では約79%に達しています。国土交通省では目標として平成32年に95%を達成することを目指しています。それ以外の用途の建物としてはやや調査時点に違いがありますが小中学校の耐震化率は73.3%、病院の耐震化率は56.2%、防災拠点となる公共施設等の耐震化率は70.9%、社会福祉施設の耐震化率は84.3%となっています。
全国平均ではこのような耐震化率ですが、都道府県別に見るとずいぶん差があります。住宅の耐震化率が最も高いのは東京都の87%、最も低いのは島根県の65%となっています。小中学校の耐震化については最も高いのが神奈川県の96.1%となっており、90%を超えるのは静岡県、宮城県、愛知県、三重県とやはり地震リスクの意識が高そうなところが上位に来ています。一方で低いのは山口県の53.0%、次いで広島県の53.3%となっており、どうも首相のおひざ元である長州はあまり成績がよろしくありません。病院や防災拠点となる公共施設等の耐震性も併せて、5つの耐震性指標(住宅、学校、病院、公共施設、社会福祉施設を単純合計してランクを見てみると、1位は神奈川県で430.3点、2位は静岡県で425.6点、3位は宮城県で414.4点、4位は愛知県で408.1点、5位は三重県で404.7点となります。以下、東京都、山梨県、滋賀県、沖縄県、宮崎県と上位の県が続きます。
低いほうは山口県が一番で305.3点、次いで岡山県が313.5点、広島県318.1点で、やはり中国地方が低いですね。山口もかつては大きな地震があったのですが、もう忘れられてしまったのでしょうか。首相の地元だけに、ちょっと気にはなりますね。