7月に入りいよいよ梅雨シーズンも末期に入ってきました。この時期は各地で豪雨が発生しやすくなるので、水害にはとりわけ注意が必要です。集中豪雨という呼称も、主にこの時期に降る集中的な雨に使われ、これまでもその地名が頭に冠された水害があちこちで起きました。私にとって一番印象が強いのは1982年に発生した長崎水害です。長崎市内だけでおよそ300名の命が失われた大きな災害でした。
ことしは春の段階での長期予報でエルニーニョ現象の関係で梅雨明けが遅くなると予想されていましたが、その後、どうやら平年並みになると修正されたようです。大きな災害が起きないうちに梅雨が明けてほしいものですが、こればかりは人の力では如何ともしがたいものですね。加えて、いま南海上には台風8号が発生し、日本列島に近づきつつあります。予報ではこれが本土に上陸するのは来週の木曜日頃になりそうですが、これから数日間は進路を注視していく必要があります。
台風は秋のものと思われがちですが、発生数だけを見れば最も多いのは8月で、次いで9月、そして10月と7月はほぼ同数になっています。日本列島に接近した数だけを見ると、8月に次いで多いのは7月で、10月よりも多くなっています。気象庁によれば過去30年間(1981~2010年)の平均で、年間約26個の台風が発生し、約11個の台風が日本から300km以内に接近し、約3個が日本に上陸しているとのことです。7月は梅雨の雨が土壌にたっぷり吸いこまれたところに台風が来ますので、状況によっては大きな被害につながる恐れがあります。
東京は台風などに伴う大きな水害を近年経験していません。いま江戸川区でスーパー堤防整備に関する住民と区との話し合いが上手くいっていないという報道がなされています。およそ200年に1度の洪水にも備えるということがうたい文句のスーパー堤防ですが、時間をかけて話し合っても必ずしも合意ができないのが今の社会です。やむを得ず立ち退きをしなければならない人たちには、できるだけ手厚い支援をすることが望まれますね。
つぼつぼのprofile
国立研究開発法人 防災科学技術研究所
防災情報研究部門
所在地
茨城県つくば市天王台3-1