本格的な梅雨入りの前に、早くも「ばてそうなほど」の暑い日が続きましたが、漸く一息つける週末になりそうです。この時期に熱中症同様に気を付けたい気象災害に光化学オキシダントがあります。自動車の排気ガスなど燃焼性ガスに含まれる窒素酸化物や炭化水素が強い太陽光線で光化学反応を起こし、有害な酸化作用を持つ物質(オキシダント)を作り出し、健康にさまざまな影響を及ぼす現象です。目がちかちかしたり、のどが痛んだり、咳が出たり、場合によってはめまいなどに発展することもあります。詳しくは環境省、気象庁連携による「光化学オキシダント関連情報提供ホームページ」が運用されていますのでご利用ください。
これに備えていわゆる光化学スモッグ警報や注意報が出されるようになりました。今年も気象庁から「全般スモッグ気象情報(光化学オキシダント)第1号」が、去る5月31日11時00分に発表されました。このときに気象庁からの文面を転記すると、(本文)「関東甲信、中国地方では、今日(31日)は晴れて日射が強く、風も風速4メートル以下の弱い所が多く、最高気温は30度以上となる所が多い見込みです。 このため、今日(31日)昼過ぎから夕方にかけて、光化学スモッグの発生しやすい気象状態となるでしょう。関東甲信、東海、近畿、中国地方では、明日(6月1日)も晴れて気温が上がり、光化学スモッグの発生しやすい気象状態となる見込みです。屋外での活動に十分注意して下さい。」というものでした。
これを受けて市町村などからもメールで光化学オキシダント警報の通知が出るようなところも増えてきています。携帯電話などから簡単に登録してメールが届くようになっていますので、お子さんのいる方など、戸外での活動が心配な方が指標にしていただくうえでも、携帯ツールの活用をご検討いただきたいところです。
ところで過去の歴史をひも解いてみると、スモッグは人類に大きな被害をもたらしています。一番有名なのは1952年にロンドンで発生したもので、グレート・スモッグと呼ばれるものでしょう。これは1952年12月5日から10日にかけて、イギリスが高気圧の圏内に入り気温が低下し、寒さに耐えるために暖房のための石炭が大量に燃やされたことと、さまざまな交通機関、産業施設から発生される燃焼性ガスが冷気に閉じ込められ、市内が硫酸の霧に覆われたためです。ほんの少し先のものさえ見えないほどの霧は、市民の家の中にも侵入し、気管支炎や肺炎、心臓病などで1万人以上が亡くなったと言われています。
日本ではかつての行動経済成長期に、都市部で大気汚染が深刻になり、たくさんの公害病が発生しました。いま振り返るとこの経験があったからこそ、今の日本の環境技術の成長があったように思います。これを是非途上国にも活用していただき、ロンドンスモッグのような悲劇が起きないようにしていただきたいものですね。