日本創生会議が先般発表した日本の将来像が話題になっています。根拠となる予測資料も公開されていますので(こちら)もしまだご覧でない方は是非お目通しいただきたいのですが、要点を言えばこのまま出生率が回復しない限り、日本では地域社会が機能しなくなるところが続出する危険があるというものです。地域社会が機能しないというのはいささか穏やかではありませんが、メディアでは消滅する市町村があるとまで表現していますので、まあ地域社会が自律的に機能するための基本条件としての住民のバランスが崩れてしまうということが、行政機能も含めて社会的な機能不全になる危険性を指摘していることになるでしょう。すでに私たちの社会はだいぶ前から主に地方で高齢化少子化が進み、地方だけで自律的な状況は作りえないところになっていて、基礎自治体は都道府県や国に依存する部分がどんどん増えてきています。
こう考えると未来は必ずしも明るくないようですが、私はそろそろ我々も未来をこれまでの「発展・成長」の延長線上に描くのではなく、「維持・成熟」の中に見出さないと厳しいのではないかと思っています。日本社会はもうこれ以上の成長を目指さなくてもよい、むしろ成熟させコンパクトで機能的な社会に切り替えたほうが良いのではないかと思います。世界がグローバル化の波の中で揺れていますが、日本の現状に調和的な国はほとんどないといってもよいと思います。従って社会の将来像を描くときに、他の国々とはその根本からして違うのに、同じルールで運営するのは無理があるというものです。日本がガラパゴス化することに不安をあおるような報道もありますが、むしろ積極的にガラパゴス化したほうが良い点もあるのではないかと思ったりします。ここで大切なのは、他の国の事情に合わせて日本を調整するのではなく、日本固有の事情をもっと理解してもらう努力ではないでしょうか。
防災の分野でも日本の技術は世界に誇るものが多々ありますが、そのままでは世界に受け入れられないものもたくさんあります。日本ではごく当たり前と思われている安全のための基準や慣習がほとんど存在していない国もたくさんあるからです。来年3月には東日本大震災の被災地である宮城県仙台市で国連世界防災会議が開催されます。いま多くの関係者がこの会議の成功のために奔走されていますが、東日本大震災の教訓を被災地から発信することと同時に、日本が世界に貢献できる防災技術の移転を具体的に進めることが大事ではないかと思います。日本は軍事力で貢献するよりも、防災力で世界貢献できる、稀有な国でもあるのですから。