愛知県大府市で発生した認知症高齢者による鉄道事故(当人死亡、91歳)に対する鉄道会社側からの損害賠償請求は、控訴審でも家族側に管理責任を認め、損害賠償を命じました。この後、最高裁で審議されるかどうかはわかりませんが、高速道路での逆走事故なども相次いでいますし、認知症患者が引き起こす事故をどう防げばよいかが大きな社会問題になっています。日本の介護保険制度は2000年にスタートし、これまで14年間、いろいろな問題を抱えながら進められてきました。しかし導入当初はこれほど認知症患者が増えるとは見込んでいなかったと思います。いま500万人にならんとする認知症患者を社会でどう見守るか、私たちは「支えの仕組み」を抜本的に考え直す時期に来ているといえるでしょう。
若年認知症を別にすれば、認知症高齢者は身体的制約を持つ人も多く、単独での移動には限界があります。とはいえ、街中を彷徨している人に対して、周りから普段から声を掛け合う習慣がなくなってきているのが私たちの社会の現状です。私の家の周りでも時々見かける女性高齢者がいて、服装やしぐさからもしかしたら認知症?と思うのですが、なかなか声をかけられません。地域に学校があるところでは、子供たちがすれ違う人には誰彼となく挨拶をすることが習慣化しているところもありますが、それも学齢にあるときだけで、社会出てからはめっきり少なくなっているのではないでしょうか。挨拶は社会の基本ということを今一度思い返さなくてはならないのかもしれません。
地域での見守りと家族での支えというのは車の両輪のようなもので、片方だけでは走ることはできません。家族だけでは支えきれずに悲劇的な事態に追い込まれることもよく耳にします。家族の多様化により一人暮らしや、高齢者だけの世帯も増えています。地域全員が安全で快適に生活できる仕組みを生み出せる活力の一助になるよう、私たちの防災コミュニケーションシステムも発展させてゆかねばならないと思います。