春は桜の季節ですが、桜は咲いたと思ったらもう散り始めるという、寿命の短い花ですね。もっともその散り際が見事なことが日本人の琴線に触れて、春の楽しみの一つになっているのかもしれませんが。桜を散らす原因の一つに春の強風があります。強風はまた火災を大きくする原因の一つでもあります。最近の火災の状況はどう変化しているのでしょうか。消防庁が毎年公表している消防白書から、最近の火災についてちょっと調べてみました。(この項で特に断りがなければ平成24年の火災統計に基づいています。)
まず、出火件数ですがここ10年間で30%も減ってきています。平成14年が年間63,651件だったものが平成24年では44,189件になっています。これはやはり火気器具の進歩やオール電化などの影響がじわじわ出てきているのかもしれません。一世代前のような裸火を扱う機会はほとんどなくなっていますのでこれ自体はよいことは確かです。死者数も減ってはいますが件数ほどではなく、2,235人が1,721人になっています。火災件数当たりの死者数で比べると、3.5人/100件が3.9人/100件となっていて、実は増えてきています。火災による死者の中で高齢者の割合が増えてきていることから、高齢化社会によって「人の脆弱さ」が高まっているように思われます。建物火災による死者の64.3%が65歳以上となっており、この点は消防庁もいろいろなところで注意喚起しています。
季節別にみると、冬季と春季の件数が高くなっていて、やはり2月から4月の春先、風が強く乾燥していると出火につながりやすい林野火災では、この傾向はさらに顕著です。ところで出火原因のトップである放火には季節性はあるのでしょうか。全国統計では1月が最も多く9.9%、11月が9.1%、3月が9%、10月が8.8%、2月が8.7%で、冬から春先にかけて若干多くなっているようです。ただし東京都の火災統計では放火にはあまり季節に差がないという記述もあるので、地域によって放火の季節性は違うのかもしれません。
放火について触れたついでに、時間帯や曜日に放火件数に差があるのでしょうか。まあ犯罪を犯すわけですから当然のことながら夜間が多く、最も多いのが0時から1時まで(9.9%)、次いで22時から23時が9.7%、2時から3時までが9.7%となっていて、人が寝静まった時間帯がもっとも危険な傾向は明らかです。呼び別にみると最も多いのが日曜日(15.2%)、次いで月曜日(14.4%)、火曜日(13.7%)となっていて、週の初めが多くなっているようです。
最後に地域別の火災の発生率を見てみました。人口1万人当たりの出火件数を都道府県別にみると、高いのは山梨県(4.95)、茨城県(4.72)、島根県(4.35)、群馬県(4.34)、栃木県(4.19)、鹿児島県(4.11)、鳥取県(4.04)、(以上が4.0以上の県)、低いのは富山県(2.00)、福井県(2.53)、京都府(2.54)、徳島県(2.54)、神奈川県(2.57)、(以上が2.6未満の県)となっています。
人口10万人当たりの死者数を都道府県別にみると、高いのは山梨県(3.62)、青森県(2.60)、岩手県(2.58)、山口県(2.35)、福島県(2.26)、低いのは沖縄県(0.42)、徳島県(0.64)、奈良県(0.64)、神奈川県(0.78)となっています。火災による死者率が左右される要因には出火率だけではなくて、年齢割合や家の広さ、火気の使用頻度なども影響するので、ランキングだけ見てもあまり意味がないかもしれませんね。