首都圏が久しぶりに大雪に見舞われましたが、皆様の地域では被害はなかったでしょうか。前もってかなりの雪になる(10年ぶりとも20年ぶりとも)言われていたので、ある程度の準備ができたのは不幸中の幸いだったかもしれません。また今回は週末だったので、旅行や行楽に出かける方や入学試験に臨まれる方には残念だったかもしれませんが、通勤通学での混乱は少ないほうだったのではないかと思います。私はあいにく講演で常総市まで出かける羽目になりましたが、一番雪のふぶいている時間以前に帰宅できたので、何とか無事に済みました。
ところでつい先日、富士山が噴火した時の「シナリオ」が国の検討会から公表されました。富士山は言うまでもなく活火山ですが、江戸時代以降大きな噴火を経験していないので、我々も他の活火山ほど警戒していない印象があります。これが浅間山や阿蘇山、あるいは桜島だったらずっと活動状況が気になるところです。火山の研究者は今も富士山の周りに観測網を張り巡らして、活動に変化がないか監視しているわけです。 火山噴火というと溶岩流とか火砕流、噴石など、どちらかというと派手な災害に目を奪われがちですが、むしろ広範囲に厄介な被害をもたらすという点で、火山灰の存在は極めて重要です。富士山の場合、首都圏から見て西側に位置しているので、噴出した灰が冬季に特に卓越する西風に乗ってやってくることは容易に想像されます。江戸時代の宝永年間(1707年12月)の噴火でも江戸に降灰があったことは、よく知られています。
灰をどうするか、結論から言えば捨てるしかないわけですが、どこに捨てるか、またどうやって運ぶか、本当に厄介です。鹿児島市のように桜島の噴火に日々直面している地域では「克灰」という意識があって、それが浸透していますが、首都圏ではまず無理でしょう。江戸時代以来災害の経験のないまま膨張してきた大都市は、こういう事態にどう臨むのか、いまからいろいなシナリオを検討しておくことは決して無駄ではありません。 「今回の雪がもし灰だったら」、そう考えると雪は融けてくれるだけまだましなのかもしれません。みなさん凍結路面でのスリップにはくれぐれもご注意ください。
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防災情報研究部門
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茨城県つくば市天王台3-1