高齢化率が年々高まってくる中、私たちの社会はいろいろな社会の仕組みを先手先手で変えていく必要に迫られています。これまでは機能や性能が重視されてきた社会でしたが、いまはそれだけではなく、新たな価値観の創出が必要になってきています。 たとえば大きな駅のターミナルやショッピングセンターに行くと、内部の構造があまりに複雑で、道に迷いそうになることはままあることです。ショッピングセンターなどではわざわざ迷路化するのも一つの作戦かもしれませんが、移動が必ずしも楽ではない高齢者にとってそれは快適とは言えないこともあるはずです。
評価の尺度として、多様性や大量性だけではなく、選択の容易性や場所としての快適性もあるわけで、「何でもそろう」とか「いつでも手に入るよ」ということがいつもよいこととは限らないわけです。 いま私たちはネットを使ってさまざまな情報を得ることに腐心しています。時には人の評価に依拠して実物を見ることなしに買い物をすることもあるでしょう。飲食店に行くときは口コミを気にしているでしょうし、旅行の際に選ぶ宿は泊まったことのある(と自己申告している)人の書き込みを参考にしていたります。それはそれで重要なことですが、その際にもやはり従来型の評価軸からは見えない部分、例えば高齢者にとって快適な場所だったか、気持ちよく時間を過ごせたかということも、もっと指標に加えていただきたいと思うのです。車いすでのアクセス性や、手すりの有無、食事制限のある人への配慮など、実際に行ってみないとわからないことはたくさんあります。
地域防災力も極論すれば地域力の反映にしかすぎません。その時に高齢者にとってやさしい防災力になっている地域なのかというのも、私たちがもっときちんと計測できるようにしなければいけない重要な指標の一つになっているとこのごろしばしば思っています。
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国立研究開発法人 防災科学技術研究所
防災情報研究部門
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茨城県つくば市天王台3-1