日本列島太平洋側の2014年正月は概ね穏やかな天気で明けましたが、東京都は都知事選でいろいろな嵐が吹き荒れそうな気配となりました。2020年の東京オリンピックが決まった直後に前知事がスキャンダル辞任するという異例の事態だけに、今後の都政を託す人が誰になるか、世間の関心も一入といったところでしょう。興味深いのは、これまで立候補を表明している人たちが、出馬に際していずれも防災に対し積極的に取り組む姿勢を見せており、現下の重要課題であると発言していることです。このような傾向は、選挙においては毎度のことといえばそうなのですが、その手法や効果についても私たちは十分に理解して、候補者を選ばなければならないのではないかと感じざるを得ません。
東京がこれからどうなっていくかは、他の諸都市にも、地方にも結構な影響を及ぼします。東京は大消費地でありますので、ここの活力が低下すると、すぐに地方に影響が波及します。また各種福祉政策など、東京から始まるものも少なくないので、東京は諸制度の実験フィールドにもなっています。そう考えると、高齢化が進む東京の旧市街や木造密集地でどのような防災、福祉対策が行われるかがカギになるのではないかと思われます。これから各候補がより具体的な都の未来像を語ってくれることを期待してはいますが、私個人としては次のような「超具体的」な事例を引き合いにして、発言してくれることを希望したいところです。
1)東京都だけではなく首都圏として取り組まねばならない深刻な災害(例えば南関東の直下型地震や、大規模な台風の上陸)などが起きたときに、都はどのような役割を担うのでしょうか。神奈川、千葉、埼玉などの県と連携して、被災者に対してシームレスな支援が可能なのかどうか具体策を提案していただきたいです。
2)東日本大震災でも問題になったように、東京都で使用する膨大な電力が東北中心に作られていた現実からして、都の消費電力をいくらかでも抑制するための具体的方策はあるのでしょうか。そろそろ使いっぱなしではなく、「我慢すること」の大切さを、最大消費地自身が示す時ではないでしょうか。
3)首都直下地震の被害想定では、相変わらず火災の危険が高く評価されています。そこで火災危険を抜本的に低減させるための具体的なアイデアはあるのでしょうか。高齢化で避難が難しい人が増えている今日、火災による被害を軽減する重要性はどんどん高まっていると思います。
防災が自治体主導になっている現実からすると、都知事という立場は総理大臣以上に市民にとって身近でかつ重要なものともいえます。21世紀の半ばまでには海溝型の巨大地震がかなりの確実性で起きると思われている今日、都の進む方向は都民でなくても重要な問題になっているのです。