伊豆大島の豪雨土砂災害から3週間が経ちました。港内にたまった大量の土砂の処理が次の課題と報道されています。このような局所的な大災害は、今後どこでも起きうることですし、極端現象としての大雨や大規模な崖崩れは、いつでも起きうることと覚悟しておく必要があります。
今回の災害については行政の対応のまずさばかりが強調されがちですが、よくよく考えると災害時の緊急対応だけではなく、事前のリスクコミュニケーションにも多くの問題があることを忘れてはなりません。平時からこのような災害が起きうることについて、また起きた場合にはどのように対処するかについてのリスクコミュニケーションが十分だったのかどうか、検証する必要があります。 ハザードマップにしても、これまでに起きたことのある災害の記録をそのまま載せたり(例えば津波の浸水域とか、火山の溶岩流の流れた跡など)している地域がほとんどで、今起きているような経験したことのないほどの事象によって引き起こされる事態までは描かれていないところも少なくありません。どこまでの災害を想定するかは、それぞれの地域の判断にゆだねられているわけですが、そこにもリスクに関するある種の合意と諒解を作っておく必要があります。10年に1度、50年に1度、100年に1度というようなレベルに応じた外力(災害)の強さを明示したハザード情報は、まだほとんど活用されていないのが現状です。
2つ目のリスクコミュニケーションは、災害発生時(あるいは直前)に行政や専門家から出されるリスク情報に基づくものですが、今回の場合は避難勧告も避難指示も出されなかったので、そもそもコミュニケーションが成立していないというのは確かでしょう。しかし今回もIT技術のおかげでさまざまなリスク情報が瞬時に飛び交っており、たとえば東京都は市民向け安心メールで大雨に関する注意をだいぶ早い段階で呼び掛けてはいました。ただ、伊豆大島の島民の方々でこれを受信し、避難行動などに結び付けた方がいたかどうかとなると、はなはだ疑問です。東京都とは言っても、大島と23区とではだいぶ地域認識が違うでしょう。
最近では自分の住まいや職場のある地域だけではなく、実家のある故郷の安心メールや、気象予報・警報などを受信している方はだいぶ増えてきているのではないかと推察されます。これらが具体的にどう防災に役立っているのか(あるいは役立っていないのか)、そろそろ検証する時期に来ているのではないでしょうか。
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防災情報研究部門
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