石巻市の幼稚園児童5名が通園バスで津波に巻き込まれ死亡した事件で、保護者が園に損害賠償を求めていた訴訟について仙台地方裁判所から判決が出され、園側に安全配慮に関する重大な違反があったとして1億7700万円の支払いが命じられました。東日本大震災に関連して、組織の安全管理の責任が問われ、出された判決としては最初のものになりました。この事案については、バスの運行コースの問題や、地震発生後の津波警報が出されていたにも関わらずなぜ高台から下って危険な海側に走ったのか、さらには津波でがれきに埋もれた中で助けを求めていた園児を助けられなかったのはなぜなのかなど、事件の具体的な状況がよくわかっていません。いまは判例のデータベースが公開されていますので、暫くすれば本事案も読めると思いますが、まずはどの段階で誰が何を了解していて、何が了解出来ていなかったかについて、客観的に整理することがとても大切です。
災害や事故が起きるたびに、なぜそうなったのか、どうして防げなかったのか、またどう対処すればもっと被害が押さえられたのかなど、何度ふり返ってもわからないことが一杯あります。もちろんすべての経過が記録されているわけではありませんので、正確さにも限度があるとは思いますが、私たちの社会では高齢化の進展も背景にあって、脆弱さがどんどん高くなってきていますので、起きる事態の予測が非常に難しくなっています。裁判になって初めて具体的な経過がわかってくるものも少なくありません。
群馬県渋川市にあった無届老人ホームで起きた火災によって高齢者が多数死亡した事件についても、運営主体の社会福祉法人の理事長が禁固2年(執行猶予4年)の判決が出されましたが、事故の直接の経過だけでなく、事故に至るまでの背景については判決文からいろいろなことがわかりました。
ご興味のある方は是非お目通しください。