東日本大震災を契機に、防災分野のハイテク技術導入は一層盛んになり、先に開催された仙台での防災技術展ではあの阪神淡路大震災の直後とは比べられないほど多様な製品やシステムが展示されました。特に目立ったのはさまざまなクラウド型の防災ネットワークシステムです。クラウドという言葉自体はあまり深い意味がなく使われているようにも思われますが、とどのつまりはエンドユーザー側のコンピュータシステムには依存せず、ネットワークを介して各種情報システムのサービスを利用できる形態ということになるでしょうか。これを最大限生かした形で災害時の安否確認を行うシステムがJ-ANPIとして開発されています。
これから日本社会が直面する災害には、大都市が強烈な地震動で大きな被害を受ける都市直下型のような地震もあれば、非常に広い範囲が強い揺れや津波に見舞われる南海トラフの巨大地震や大規模台風のようなタイプもあります。このような時に、被災者の安否状況をいち早く知りたいという市民ニーズにこたえてJ-ANPIは開発されたようです。9月からは千葉県流山市なども参加するそうで、徐々にこの仕組みを利用して地域住民の安否情報を積極的に発信していこうとする自治体が増えていくのではないかと思われます。
一方でこのようなハイテク防災とは対照的に、ローテクですが被災者一人一人にとって大切な防災の仕組みも整備されつつあります。東京都福祉保健局では「ヘルプカード作成のためのガイドライン」を編集して、各市町村に災害時要援護者となる住民に積極的に配布し利用してもらう取り組みを進めています。ヘルプカードは高齢者、さまざまな傷害のある人、持病のある人、そのほか災害時に周囲からの支援が必要となった時になかなか自分から言い出せない人にとってもこれからますます重要になる存在です。
いざという時に、なにはともあれ自分や家族の無事を知らせたい、知りたいと思うのは当然ですし、それさえできれば心のゆとりもできてより適切な行動が可能になると思います。さて、明日は9月1日「防災の日」です。朝7時から11時まで4時間にわたってミュージックバードに生出演でさまざまな防災の話題を議論します。全国のコミュニティ放送をお聴きの方、よろしくお願いします。