前回のブログでは安全のためのブランド表示としての適マークの復活があるかもしれないという話を書きましたが、一方で違反となっている建物を公表する制度も始まっています。とはいってもこれは東京消防庁だけで、まだ全国のすべての消防がこの仕組みをスタートしているわけではありません。しかし再三の警告に関わらず、火災によって取り返しのつかない被害を生じている現状からして、まずは「違反しているのだ」ということをわかりやすく明示して、利用者に警告を与えることは必要です。東京消防庁のホームページでは、区市ごとに、また地図とも連携して違反対象物を確認することができます。興味深いのは違反対象となっている建築物だけではなく、認定有料防火対象物や火災予防上の命令を受けている対象物も公表されていることで、問題がある建物にはそれぞれどこを改善しなければならないのかまで具体的に書かれているのです(こちら)。
特に火災予防上の命令を受けている建物は地域的に固まっている(繁華街に多い)ので、いろいろな意味で興味深く見ることができました。東京を代表する繁華街である銀座にやたらと目立つ看板で知られるあのビル(脱税問題で話題になっていますが、言わなくてもわかりますよね)が沢山の改善命令を受けているという事実は、もしかするとあまり知られていないかもしれません。
こういう情報をネットで流すのはよいことではありますが、では現場で利用者に直接リスクの存在を訴えかけて、利用に一定の制約を生じさせる効果があるかどうかとなると、はなはだ疑問です。仕事帰りにちょっと一杯ひっかけようという御仁が、これから行こうという店の火災安全をいちいち確認するとはとても思えませんからね。グルメ関係のサイトでメニューや値段、口コミは調べても、安全までは調べないでしょう。また利用する人はそこに入っている「テナント」は認識していても、ビルそのものはほとんど関心を持って見ていないでしょう。
このようにリスクに関する情報は世の中にたくさん存在はしているのです。でもそれは十分流通し活用されていないのが現実です。このような違反施設を見ると、違反が認定されると同時に、その施設を利用する際にはかならず「違反だとわかって利用すること」を認識させるような説明書を配布することなんていう法律を作って、情報開示を義務付けるなんて言うのは難しいでしょうか。あるいは施設に火災危険性があることをでかでかと入り口に掲示しないと使用できなくするなんていうのも、検討に値すると思うんですけどね。事故があってから、それ見たことかというのでは遅すぎます。規制緩和で安全が脅かされないようにするためにも、自助のためのインフォームドコンセントはとても重要になると思うのですが。