被災地でさまざまな復興の取組が行われていますが、津波で被災が大きかった沿岸部だけではなく、仙台市や石巻市など、比較的規模の大きな都市部においても被災住宅の修繕や改修が進められてきています。どのような災害でも共通して言えることですが、この復興については地域や取り組み主体によってかなりの遅速があり、進んでいるところは震災から2年で完了というところもあれば、一向に進まないで難儀しているところもあります。
私達は災害が起きると、どうして事前にいろいろやっておかなかったんだろうといつも悔やむわけですが、後悔先に立たずという言葉通り、たいていの事は後から悔やむばかりです。一つには私たちが長期的な視点でライフステージのリスクを見ていないことによる問題もあります。共同住宅が震災後になかなか復興が進まなくて苦労するという点は、かつて阪神淡路大震災で大きな問題になりました。そこであらためてクローズアップされたのがマンションの修繕積立金です。共同住宅は日本の住宅の42%を超え(平成20年住宅土地統計調査)、もはや一戸建ての震災復興モデルとは別に、マンションの復興スキームも事前に検討しておくことがきわめて大切な時代なのですが、そもそもマンションの総会すらぎりぎりで成立するというところが多い昨今では、なかなか取り組みが進まないですね。
このような中、国土交通省はマンションの修繕積立金に関するガイドラインを平成23年4月に出しています。震災の直後だったので、あまり注目されなかったかもしれませんが、この資料によればマンションの長期修繕に必要な積立金は平米あたり月額平均200円前後になります。仮に80平米のマンションであれば月1万6千円になり、年で19万2千円。これを15年間続けると288万円になります。マンションの価格自体は数千万円ですが、それ以外に15年でさらに300万近い費用が維持管理に必ず求められるわけです。耐用年数を60年とすれば、少なくとも3回程度の大規模修繕が必要でしょうから合計で900万円ほどの積立金を「投資」することになります。このことはマンション購入時に私達は誰でも知っておくことが必要です。
都市部で快適にかつ効率的に生活するには、マンションが欠かせません。一戸建てよりも便利なところに立地し、庭が無いところを除けば、むしろ防犯や防災の観点から安心で快適に暮らせるということからマンションを選択する方も少なくないでしょう。でも生涯の買い物として、どこまで投資していくべきかは、もっと注意を払って関心を持っていかないと、これから来るべき大規模災害では都市部で被災マンションがスラムにならないためにも大切なことではないかと思います。壁ひとつ隔てた臨戸に対して関心の薄いマンション生活ではありますが、今一度振り返ってみる必要がありそうです。
つぼつぼのprofile
国立研究開発法人 防災科学技術研究所
防災情報研究部門
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茨城県つくば市天王台3-1