まもなくつくば市で発生した強烈な竜巻(2012年5月6日発生)から1年となります。べた基礎のかなり新しい住宅が基礎から根こそぎひっくり返されるという、とてつもない風の力をまざまざと見せつけられましたが、このように今までに経験したことのないような自然の力が作用するために、経験値が役に立たないケースが増えてきているような気がします。過去の経験はそれ自体大変貴重な情報ではあるのですが、それを超えた事態が生じると途端に対応ができなくなるというのでは困ります。
この度(4月12日)、文部科学省、気象庁、環境省が合同で気候変動の観測・予測・影響評価に関する総合レポート「日本の気候変動とその影響(2012年度版)」を公表しました。フルレポートは90ページにもならんという大部なものですが、概要版も公表されていて、要点がわかりやすく解説されています。ポイントを整理すると、
1)地球の温暖化は着実に進んでおり、北半球の高緯度から中緯度にかけては気温上昇が顕著になっている。この傾向は21世紀にさらに進むと予想され、その原因は人為起源の温室効果ガスの排出による可能性が非常に高い。
2)温暖化が進むことで、日本付近では強い雨(豪雨)が増加し、さらに積雪量の減少なども影響して河川の流量が低下し渇水になる可能性が高まる。またこれに伴い河川や湖沼の水質が低下する危険性も高くなる。
3)温暖化による海水面の上昇が沿岸部における高波や高潮のリスクを増大させる。
4)気候変動の影響は自然の生態系にも影響を及ぼすと同時に、農業などにも深刻な変化を生じさせる可能性があり、さらには感染症の増加や熱中症の増加など、健康面でも影響が出てくる可能性が高い。
といったところでしょうか。何がどう作用して、結果的にどのようなリスクに結びつくかは非常に難しいところですが、フルレポートにはその流れが掴みやすいように図化されていますので、ご興味のある方は是非お目通しください。
それにしても「豪雨」と「渇水」という両極端な現象が同時に起きやすくなるということは、私たちの防災の考え方にも大きな変化をもたらすかもしれません。最近発生している局地的に「猛烈な」災害では、災害救助法や被災者生活再建支援法の適用などで難しいケースも起きるでしょうし、中央政府ですべての災害対応をカバーする体制ではなく、それぞれの現場(市町村よりさらに小さい規模の)で災害対応ができるような体制づくりも急務となるでしょう。世界でも最も水の豊かな国である日本では、これまで水のありがたみをあまり意識しませんでしたが、これからはもっともっと資源としての水を考えてゆかねばなりませんね。