南海トラフに想定されている海溝型の巨大地震が発生した際の経済被害の最悪のケースの予測額が220兆円と発表されました。この数字は日本のGDPの約半分、東日本大震災の被害額の10倍にも上るといわれています。どうも数字が途方もなさ過ぎて、実感のわかない方がほとんどでしょう。実際、この桁の数字となると国単位のGDPくらいしか比較しようもないものです。世界銀行が発表している2011年GDPでみると、米国がトップで14.99兆ドル、2位が中国の7.32兆ドル、日本が3位で5.87兆ドル、以下、ドイツが3.60兆ドル、フランスが2.77兆ドル、ブラジルが2.48兆ドル、イギリスが2.45兆ドル、イタリアが2.19兆ドルで、ここまでが220兆円(=約2兆ドル:1ドル=90円換算)を上回ります。国家として220兆円を上回るGDPをたたき出しているのは世銀が把握している185か国中の8つしかない(世界のほとんどの国のGDPは220兆円に遠く及ばない)ことがわかります。日本ではただ一回の災害でこのとてつもない額の「被害」が生じる恐れがあるという評価に私たちは向き合っているわけです。数字の大きさに戸惑うばかりではありますが、この数字は私たちがこれからいろいろな対策を進めていくことでどんどん減らすことが可能な数字です。停電は2,710万戸、断水は3,440万人、ガスの供給停止は180万戸、電話回線の不通は930万回線と見積もりが出ています。これらを極力ゼロに近づけるための対策について、これから10年くらいを目途にどんどん進めていかねばなりません。
ところでもう一つ、私たちの生活に関わる大きな数字として国の予算があります。平成24年度の一般会計予算の歳出(歳入)総額は約90兆円ですので、220兆円という被害額はこの倍にも匹敵するものです。社会保障費が約22兆円ですので、南海トラフの巨大地震による最悪の被害額は日本のもろもろの社会保障に費やされる額の約10倍という規模になります。90兆の歳出を賄うために公債などで44兆もの歳入をはかっている借金財政のわが国ですので、震災の被害を将来世代へのつけに回さないためにも、220兆を100兆、50兆と、どんどん減らしていく工夫をすることが急務です。景気が上向くのは結構なことですが、一方でこのような被害額もどんどん数字が大きくなって、日本が被災することの影響が海外にどんどん波及してしまう事態はできるだけ避けなければなりません。いま私たちの国はなかなか難しいかじ取りをする必要性に迫られています。