先日ロシアで隕石が落下して大騒ぎとなりましたが、このような「珍しい」自然現象に遭遇する確率は非常に希なことで、さらにそれによって身体に危害が及ぶような事態はさらに希なことでしょう。国土の広いロシアだからこそ、多くの目撃証言や映像記録が残されたのだと思われます。
そのような不測の事態に備えて、私たちの社会は「危機管理」という名称を付けたさまざまなシステムを整備しています。特に東日本大震災以来、ネットワーク型の危機管理には「クラウド」という概念が用いられ、なにやらSFのターミネーターに登場するスカイネットのような様相を呈してきています。信頼性が高まるのは望ましいことではありますが、仕組みが複雑になってくるともたらされる情報も多くなり、必然的にそこでの咄嗟の判断が難しくなるということは私たちもしばしば経験するところです。多様な選択肢を提示されると、判断能力は急激に低下してしまいます。できれば判断に迷いのないわかりやすいシステムであることが期待されます。
例えば最近急速に普及しているスマートホンですが、そこで使われるアプリケーションも実に種類が多く、選ぶのに迷った経験のある方はたくさんいると思います。もっと簡単な電話のケースでさえ、量販店に行くとうんざりするほどの種類が並んでいます。多様な選択肢のある環境は、必ずしも良いことばかりではないのです。いざ危機に直面した時に、本当に必要な判断を適切に行うためには、多くの情報のなかから本当に大事なものを見分けていく能力も問われます。特にリーダーの立場を務めることになった人には、精神的な負担も大きくなるでしょう。
JR東日本は東日本大震災によりかなりの沿線で被害がありました。特に常磐線は東北地方南部の太平洋側の海岸線にきわめて近いところを走行するため、車両が津波に流されたり、転覆したりしたものもたくさんありました。それにもかかわらず乗務員、乗客に一人の死者、負傷者が出なかったことはあまり知られていません。乗務員と乗客の間でどのようなやり取りがあり、それぞれが現場で適切に判断して協働が生まれ、無事に災害を乗り切ったことがわかるレポートが公開されています。添付されたビデオでは沢山の証言が見られます。