間もなく2月も終わり、いよいよ春3月を迎える時期になりました。まだまだ寒い日が続きそうですが、2月最終日の28日午後に世田谷区の玉川支所で防災に関する講演をさせていただくことになりました。そこであらためて世田谷区のさまざまな社会統計に関する情報を調べてみました。
まず世田谷区というのは東京23区最大の人口を持つ区であるということは、一般にはあまり認識されていないかもしれません。人口は実に84万人にものぼり、区だけで政令指定都市になんなんというほどの規模になっています。横浜市の370万人、大阪市の268万人、名古屋市の227万人と、日本の政令指定都市は100万人を大きく超えるところもありますが、世田谷区は平成18年に政令指定都市になった堺市(第14位)よりも人口が多いのです。面積は大田区にわずかの差で及びませんが、特別区というよりも世田谷区の中に「区内区」を設けてもよいほどの人口規模になっています。人口密度は1平方キロあたり1万4千人となっていて、横浜市の8千人あたりよりもずっと高く、区のほとんどが居住可能な、土地条件には恵まれた場所にあることがわかります。
東京都は他の道府県よりも、防災計画や被害想定、ハザードマップなどの検討や情報公開はずっと進んでいて、すでに1970年代からさまざまな資料が作成され公表されてきました。東日本大震災が起きたことで、「想定」が持つ意味があらためて問われていますが、特定の災害を想定するのではなく、地域が持つ災害のポテンシャルを評価する「危険度」という指標をいち早く公開していたのも東京都です。公開されている平成20年版で世田谷区の部分を見ると、全体的には隣接する他の区(新宿区、目黒区、品川区、大田区、渋谷区など)よりも危険度が低く評価されているようです。ただし区内でも地域差はあり、町丁目単位でみると北沢地域、世田谷地域がやや高く、烏山地域、砧地域、玉川地域がやや低く評価されているようです。商業活動が多いところのほうがどうしても出火危険度や避難危険度が高く評価されるので、こういう結果にはなると思いますが、この情報を住民の方々がどのように受け止められていられるか、興味深いところです。
近年の災害を見ていると、やはり建物を頑丈にしたり(耐震化)、道路を拡げたり建物を非木造にして町を燃えにくくしたり(不燃化)するという都市計画型の防災だけではなく、個人や家庭単位での被災後の生活力を維持する(打たれ強くする)生活防災という視点がとても大切になっています。世田谷区の人口は84万人と書きましたが、その4%にあたる3万4千人は介護認定を受けています。この人たちは災害時には自分で対応することが厳しくなることが容易に予想され、もしかすると首都直下地震のような大災害では生活再建が難しくなるかもしれません。この数字は今後着実に増えていきます。区の人口は平成33年にピークが来ると予想され、まだまだ地方都市よりは人口の落ち込み時期が遅くなるとみられている世田谷区ですが、高齢人口自体の増加は歯止めがきかず平成27年には人口の15%の12万3千人が高齢者になると予測されています。早急に地域防災力の低下を防ぐ手を打つ必要があるといえるでしょう。
先週末(2月23日)に第3回防災コンテストの表彰式・シンポジウムが東京国際フォーラムで行われました。今回も全国各地からさまざまな方々からユニークな作品が応募されました。作品的には年々充実しているものも見受けられますが、やはり都市部からの応募が少ないことがやや懸念されます。防災ドラマにせよ防災マップにせよ「地域の様々な主体が「協働」で作成する」ことを目指したコンテストですので、都市部での「協働」が生まれにくい環境を改善することが、私たちに課せられた重要な責務だと考えています。