政権が代わってまた振出しに戻ってしまう政策もあるようですが、私たちの社会がいろいろな分野で改善されてゆく活動が停滞したり中断したりすることがないことが望まれます。防災に関わりの深い分野では民主党政権になったときに内閣府に円卓会議まで設けられた「新しい公共」推進会議の活動が今後どうなるのか気になります。新しい公共という概念は、いつの間にか社会に浸透してしまった「公」が「民」を指導して引っ張っていくという形ではなく、あらゆる主体が「協働」を原則に自発的に支えあえる社会を目指すための概念で、もともとは日本社会のいろいろな側面で生きていた考え方や仕組みに根差しているものです。そのため、わざわざ「新しい公共」などと言い換えなくても社会には根幹となる仕組みが一杯あったのですが、市場原理が優先するあまり、人や地域が持っている絆がどんどんすたれていくことを背景に、共同体のあり方にあらためて光が当たったような状況にありました。東日本大震災はこのような背景で発生したこともあり、さまざまな媒体で「絆」が唱和される結果となりました。
平成23年度の国民生活選好度調査によれば、社会的サービスを提供する活動として今後増えることが期待される分野の筆頭は「介護・福祉」で約66%、次いで「防犯・防災」が約45%、「子育て」が同じく約45%、「まちづくり」が約32%となっています。「環境保護・地球温暖化対策」は意外に伸びず24%ですので、人々が自分たちの身近に感じられる安心や安全、快適さをとにかく優先していることがわかります。ではそれらを支える具体的な活動に自らが参加しているかとなると、分野によってかなり差があり、「まちづくり」では7.8%、「防犯・防災」では7.1%が参加となっているのに「教育」では3.4%、「子育て」では5.4%、「介護・福祉」では4.8%しか具体的な社会参加はないという結果です。防犯や防災のような地域の安全性を目に見える形で改善していくという活動は、まだ社会参加率の高い部類に属し、他の分野では一般市民が社会に関わりたいと思っていても、制度や専門の産業があって現実には踏み込めないことが多いことが伺われます。尤も「教育」などは「学校にお任せ」と思っている保護者の方も結構いると思いますので、ここはひとつ「子どもは学校だけではなく地域で育てる」というかつての慣習を足元から見直していくことも必要でしょう。親が自分の仕事や生活を優先するあまり、子どもの関わる世界に無関心になればなるほど、子どもの心は離れていきます。
昨日開催されたかすみがうら市の下稲吉小学校での防災ワークショップでは、参加された区長さんから地域にいる高齢者のさらなる活用が提案されました。児童の通学途上で災害が発生した場合の保護や連携について、まだまだ自分たちでできることがあるという声は、団塊の世代の方々を含めてさらに力強くなっていくことが期待されそうです。