国際情勢が非常にめまぐるしく報道されるようになると、日本社会と他国の社会との比較が多くなり、ずいぶん違うところが目に付く気がします。某元NHKの解説委員の方が引っ張りだこなのは、国際情勢に詳しく通じているということだけではなく、彼が日本と諸外国とを比較しながらそれを巧みに説明できる能力に長けていることが大きいように思います。それにしても日本はやはり諸外国と比べて特殊な状況にある社会なのか、そしてそれは悪いことばかりなのかというと、結論は容易ではありません。今回の人質事件にしても結末はどうなるかまだわかりませんが、問題解決に臨む姿勢の違いや、情報公開の在り方などの違いについて十分理解したうえで対策を練っておく必要があるのでしょう。
ある問題が生じたときに、その結果をきちんと受け止め、同様の問題が今後起きないように現状を変えていくという行動力は、社会の活性度に依存すると考えられます。日本社会はかつての高度成長期には大きく変わることも厭わない大変活性度の高い社会だったように思います。その日本社会も平成に入って社会自体が成熟してくると、ちょうど人が歳をとるように「変わること」をなかなか認めない社会になってきたように感じます。歳をとることは人も含めて成熟した豊かな思考と熟慮が可能になるので、よいことではありますが、一方で思い切った行動がとれないというジレンマが付きまとっている気がします。問題の種類は違いますが、大阪の高校で発生した体罰事件での入試対応の件に関しても、このまま継続すればおそらく問題解決にはならないという市長の強い危機感がなせる所だろうと思います。
ところで東日本大震災での福島原子力発電所の事故を受けて、原発の安全性は抜本的に「変わる」のでしょうか。国の原子力規制委員会の新しい安全基準の骨子案が今日公開されました。防護措置実施の判断基準が見直された今回の内容は、これから再稼働されるかもしれないすべての原子力発電所に適用される可能性があります。私たちはもっと高い関心を持って、この議論の行方を見ていく必要があるでしょう。
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