一昨日、東京都は来るべき大震災に備えて、延焼火災による被害を防ぐための対策として推進してきた「不燃化推進特定整備地区」(略称:不燃化特区)の案をまとめて、今後10年間で達成する「木密地域不燃化プロジェクト」の概要も公開しました。最も新しい政府の地震調査研究推進本部の確率評価によれば、今後10年以内に南関東で発生するM7クラス(M6.7-7.2)の地震の発生確率は約30%、50年以内では約90%に達しています。私たちの世代または次の世代の間に確実に被害地震が起きることを前提に備えておく必要があります。
難しいのは都市を不燃化していく過程でエアポケットのように小さな木造密集集団ができてしまうことで、それを囲むように不燃化建築物が建設されてしまうと、街区がちょうど煙突のような構造になって、大規模な延焼にはならないけれどもあちこちで火災が起きたら消火が追い付かないという事態が懸念されることです。私ももう30年以上も前ですが、神田の街をしらみつぶしに調べた際に、街区の奥に封じ込められるように木造建物が残されているのを見てどうしたものかと思いました。自衛消防、特に消防団などの市民消防組織がしっかり稼働できる体制もきちんと整備する必要があります。
木造密集地域は同時に高い高齢化地域でもあります。耐災害性をハード面だけではなくソフト面も含めて充実させるために、今一度地域の住まい方を総点検する必要があるでしょう。私たちのプロジェクトでも茨城県を中心に学校を軸にした地域防災の取り組みを支援していますが、これまでのように学校を単なる避難所として捉えるだけでなく、地区の連携を図るための基本単位として、学校区、あるいは町内単位など、地区ごとの防災カルテを作り、弱点をあぶりだし改善していく取り組みをもっと促進していきたいと思います。
つぼつぼのprofile
国立研究開発法人 防災科学技術研究所
防災情報研究部門
所在地
茨城県つくば市天王台3-1